そんな時代に、世界に胸を張れる皇室を、あんな若造に穢されたくない――。これは私が言ったのではない。たまたま立ち話を聞きかじっただけだが、実に腑に落ちた。閉塞した社会で、小室さんは格好の捌け口だったのかもしれない。
SNSは顔のない化け物
2つ目は、そんなわだかまりをSNSが増幅したことだ。90年代ならこれほど狂乱状態にはならなかっただろう。SNSは顔のない化け物のようなものだから、好き勝手なことを書き込める。そのうえ、よほど問題にならない限りだれかが責任を取るわけでもない。書き込む人の悪意が増幅されてしまうシステムだ。
最初は借金を返していないことへの非難だったのに、これでもかとばかりにどんどん肥大化していったのはそのせいだろう。
それにしても単純な疑問がある。ふたりが婚約内定発表をする以前に、宮内庁はなぜ小室家の身辺調査をしなかったのだろうか。事前に「金銭トラブル」がわかっていれば、宮内庁が動かずとも内々に処理できたはずである。
「考えられるのは、宮内庁が気がきかなくて動かなかった。もしくは、秋篠宮ご夫妻がそんなことはやるなと命じたかですね。おそらく後者でしょう。宮内庁が裏で動けば簡単に始末できていたはずです。自由で個人の自立心を尊重する秋篠宮家の家風が、今回は裏目に出たということでしょう」(皇室記者)
小室さんの意思とは関係なしに、お金に困った母子家庭の息子が皇族と結婚すると知った一部の人たちが、小室家が「皇室の名前を利用しようとしている」「一時金欲しさに結婚する」と思い込んだのかもしれない。小室家の「金銭トラブル」が、かたちを変えて噴出するたびに、怒りのコメントがどっと増えたそうだ。
小室圭さんの悲劇
いったん色のついたフィルターで見られると、それを変えるのは難儀だ。のちの「小室文書」でもわかったように、小室さんは母親の「金銭トラブル」を借金として考えていなかったのだから、当然釈明するつもりはなかったのだろう。沈黙を続けていたのは、なぜ自分たちが非難されるのかという、世間とは逆の怒りかもしれない。
2022.06.10(金)
文=奥野修司