私たちよりレベルが下のあんな家族が、皇族の一員になろうとしているなんて信じられない!というわけである。小室さんが嫌いというわけではない。自分たちと同じような人が、雲の上のような皇族と結婚することが許せないのかもしれない。世の中にはシンデレラ物語の逆バージョンでも拍手喝采で迎えられる人もいるが、どうも内親王が相手ではそういうわけにはいかないようだ。
「今の世の中、こんな母親も小室さんのような青年も掃いて捨てるほどいます。それに、批判の中心になっている小室家の金銭トラブルは、母・佳代さんの問題であって、息子の小室圭さんが借金したわけではありません。なぜ親の借金で子どもが縛られなければならないか。なんだか、坊主憎けりゃ袈裟まで、といわんばかりですね」と、ある社会派ジャーナリストは憤慨していたが、そんな正論は通らなかった。
よしんば小室さんが品位のない男だとしても、その男を伴侶として選んだのは大人の眞子さん自身であり、結婚はあくまでふたりの意思で決めたことだ。それを、近所のおじさんおばさんにすぎない人たちが、一億総小姑のように非難するのはどうしてだろう。
ある皇室関係者は、「プライバシーを暴かれたうえ、金目当てだのなんだのと叩かれて、万が一、小室さん母子が自殺でもしたら、メディアはどう責任を取るのだろう」と心配していたが、さいわい繊細な母親でなくてよかったといえる。
かつての田中角栄元首相も極貧の生活から総理大臣まで上り詰め、これに対して上流階級は「成り上がり者」と非難したが、逆に庶民は「今太閤」と呼んでたたえた。ところが、小室さんの場合は、上も下も批判の大合唱なのである。
時期が悪かったこともある。
上皇上皇后ご夫妻が結婚されたときのように、高度経済成長期であったらまた違っていたかもしれない。数十年前までは「ジャパン・アズ・ナンバーワン」なんておだてられて1等国の仲間入りをしたと思っていたのに、「1億総中流」の社会が壊れ、格差がすさまじく広がったうえ、いまや2等国に転落してしまった。税金は垂れ流しで国家の借金は増えるばかりなのに、経済は停滞し、給料が上がらず、まともな就職もできない。
2022.06.10(金)
文=奥野修司