そして1999年〜2001年の「男子ヴォーカリストオーディション」では、ピリピリ空気の中、素晴らしい包容力を見せライバル達にも慕われていた佐藤篤志さんの人柄に感動した。その後EXILEの「ATSUSHI」としてご活躍しているのを発見したときは嬉しかった……! 嗚呼、「ASAYAN」と聞いただけで怒涛の如く名シーンが瞼に映る。あの番組が終了してもう20年も経つとは。

 

 昨年秋から、このASAYANと同じ枠で(テレビ東京の日曜21時台)、スターを発掘するオーディション番組「~夢のオーディションバラエティー~Dreamer Z」が放送されている。Z世代をターゲットにしたオーディションは、「ASAYAN」のヒリヒリ感とは違う、自分との戦いを感じる。

「オンリーワン時代」の戸惑い

 Z世代は、幼少の頃からデジタルに慣れ親しんでいる世代。そしてまた「オンリーワン」という言葉が身近にあった世代でもある。この言葉は、言わずもがな「世界に一つだけの花」の中にあるフレーズ。2002年夏にSMAPの14枚目のアルバム「SMAP 015/Drink! Smap!」に収録されたのち、2003年春に35枚目のシングルとして発売され大ヒットした。

「ナンバーワンにならなくてもいい」という歌詞に救われた人、ホッとした人、イラッとした人、様々な感情を日本中に吹かせたが、「オンリーワン」という言葉は、まちがいなく時代の価値観を「個性」重視に押した。そして2004年からmixiとFacebookのサービスが開始され、このSNSの発展は「世界に一つだけの花(自分の価値観)を咲かせる」ための最高のツールとなっていく。

 ただ、自分らしく咲くって相当ボンヤリしていて難しい。他人と競争するのが減るぶん、増える自問自答。

 SNS黎明期は「使いこなせれば才能が花開くのだろうけど、コントロールできるか自信がない」「誰かに見つけてほしいが、それはそれで恐ろしく面倒なプロセスを踏まねばならない」という自分と向き合う複雑さが濃く漂っていた。

2022.04.15(金)
文=田中 稲