番組プロデューサーは、大倉へのオファーの理由をこのように明かしている。世間的には関ジャニ∞での印象が強いかもしれないが、ジャニーズ事務所の中では“演技班”の一人。ラブストーリーの相手役はもちろん、医療ドラマや刑事ドラマでもメインを飾る”ジャニーズ俳優の王道”を歩んできた。しかし、最近はアイドルらしからぬ影のある役がつづき、それが妙にハマっているのだ。

 

親友を裏切り、すべてを失う…大倉の転機となった役

 ドラマ好きの筆者から見ると、フジテレビの同枠で放送された2018年のドラマ『モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-』に、大倉の転機はあった。演じた南条幸男は、華麗に復讐する側……ではない。親友だった主人公(ディーン・フジオカ)への裏切りが発覚し、人気俳優としての地位も名誉も幸せな家庭も手放すことになってしまう哀れな男だった。

 ひたすら没落への道を辿る俳優の役をジャニーズが演じるのにも驚くが、さらに印象的だったのは第7話の予告。全てを失い、ただただ呆然と後悔の涙を流す幸男の映像だけが流れた。後にも先にも俳優の泣き顔アップだけが映る予告映像なんて見たことないが、大倉の演技に委ねられたあの15秒間は、今も鮮明に覚えている。

ドラマ『モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-』公式HPより
ドラマ『モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-』公式HPより

言い寄られたら断れず、次々と関係を持ってしまうダメ男も

 2020年の映画『窮鼠はチーズの夢を見る』で演じた大伴恭一も、どうしようもない役だった。言い寄られたら断れない性格の恭一は不倫をしているが、このことを黙っていることを条件に迫ってきた後輩の今ヶ瀬(成田凌)をも受け入れてしまう。

 脚本担当の堀泉杏は、オファー前から恭一役に大倉を重ねていたそう。のらりくらりと漂う恭一にはモヤモヤする一方で、そこはかとない色気のようなものを感じ、終始目が離せない存在だった。恭一もまた“アイドル”とは結び付かない役どころなのだが、大倉の“アイドル”という輝かしいベースがあるからこそ、恭一が持つ陰影がより強く感じられたのかもしれない。

2021.02.11(木)
文=明日菜子