琉球王朝からの歴史を受け継ぐ工房へ
では、その紅型。一体どうやって作られているのでしょう。
琉球王朝時代からの歴史を受け継ぐ「紅型三宗家」といわれる名門のひとつ、「知念紅型研究所」を訪ねてみました。
知念家はその当時からの伝統を、幾多の困難を乗り越えながら奇跡のように守り継いできた名門です。
現在は、10代目となる知念冬馬さんが9名の職人さんを率いて、その比類ない技を伝承しながら、独自の感性で新たな作品も生み出しています。
紅型の制作は、まず「型彫り」とよばれる型紙作りから始まります。
図案を考え、それを一枚の型紙に彫り抜いていくのです。
そして、その型紙を布地にのせ、文様を布の上に写しとる「型置き」、小さな筆を使って配色を施す「色差し」、「隈取り」と丹念な手仕事が続きます。
さらに、鮮やかに彩色された布地を蒸しあげて顔料を定着させた後、水洗いする「水元(みずもと)」、「糊伏せ」、「地染め」……。工程すべてに、職人技がたっぷり詰まっているのです。
「昔ながらに紅型を染めていくには、季節や天候も大きく影響します。たとえば琉球藍。これは、染料がすぐに乾く夏が向いていて、美しく発色します」
それゆえ雨の日が多いと乾燥が進まず、制作も滞ってしまうのだとか。
紅型のひとつひとつには、職人さんの手仕事だけでなく、沖縄の気候風土も凝縮しているのです。
できあがった紅型は、反物として全国の呉服屋さんへと送られ、華やかな着物や帯などに仕立てられます。
「最近では、紅型のデザインを用いたさまざまな取り組みも行っています」
知念さんが理事を務め、紅型を次世代へとつなぐさまざまな活動を手がけている「琉球びんがた普及伝承コンソーシアム」との活動では、1875年に創業した南イタリアの老舗チョコレート工房とのコラボレーションなども実現。
こだわりが詰まった日本初上陸の絶品チョコレートに、沖縄・伊江島産のさとうきびから作られる上質な黒糖を配合。パッケージには、知念紅型研究所のさとうきび柄が用いられていて、新しい沖縄土産として注目です。
また、ユニークなアイテムとして話題を集めているのが「琉球びんがた道具箱」。
デザインも素敵な白い箱の中には、実際に職人さんが使っているのと同じ筆や絵皿などが入っていて、知念紅型研究所が監修した指南書を読みながら彩色を施し、一枚の風呂敷を仕上げるというもの。
おうちにいながらにして、紅型の世界をさらに奥深く体感することができます。
では、次のページでは、これまでにない独創的な世界観で紅型の新時代をクリエイトする工房を訪ねてみましょう。
知念紅型研究所
オーダー、工房見学などの相談はウェブサイトから。
https://www.chinenbingata.com/
琉球びんがた普及伝承コンソーシアム
オンラインショップ https://bingatadesign.com/
取材・文=矢野詔次郎
撮影=橋本 篤