まだまだ収束の兆しが見えてこないコロナ禍。
国内外を自由に旅できる日常が戻るのを願いつつ、このような時代だからこそ生まれた旅スタイルの前向きな変化について星野佳路さんにお話を聞きました。
※掲載写真は、全て「星のや沖縄」のもの。
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2020年、星野リゾートでは「星のや沖縄」「界 長門」をはじめ、3つのホテルを開業しました。
沖縄は、私も本島でナンバーワンだと思うロケーション。波を間近に眺められる低層建築にし、客室も最高の角度になるようこだわりました。
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海の美しさは申し分ない。癒やしの風景は間違いなくそこにある。だからこそ、夏のビーチだけではない、年間を通じて魅力を発信できる文化リゾートとして、様々なコンテンツを揃えたいと考えています。
テレワークが変える旅と休暇のカタチ
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さて、コロナ禍の先行きは、今なお予断を許しません。
一方で治療法の進歩、ワクチンの開発も加速しています。2021年は、様々な影響を受けながらも、社会全体がコロナから脱却していくための1年になると思っています。
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「コロナ禍での開業なんて大丈夫ですか?」とよく聞かれますが、コロナ禍だからこそできたこともありました。
観光はとても裾野の広い業界です。食材の生産者さん、納入業者さんをはじめ、多くの人が今、困難な状況にあります。
そのなかでお互い助け合おうという動きが生まれ、そうした方々との協力関係、絆が深まったのです。
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たとえば、Go Toトラベルの地域共通クーポンをリゾート内の売店ではなく、本当に地域振興のために使ってもらえるよう、各地で様々な連携が始まりました。
沖縄では「星野リゾート バンタカフェ」で“海辺のやちむん市”を開いたほか、箱根の「界 仙石原」ではアーティストを応援するエキシビション、軽井沢では“おいしい信州応援マルシェ”などの取り組みを行っています。
「青森屋」では、ねぶた史上初となる3流派合作のねぶた制作プロジェクトを実施。これらは結果として、地域の魅力をさらに掘り下げることとなり、今後の観光力アップに確実につながると思います。
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また、テレワークの定着も大きな変化です。観光地にいながら出勤できるというのは、実はものすごいイノベーション。
これで休みの取り方も変わります。飛び石連休の平日をテレワークにする。すると大型連休でなくても旅行ができますし、特定の日に観光客が集中する“密”も避けられるのです。
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ちなみに私自身、年間60日のスキーを10年以上前から必達目標としています。
といっても滑るのは午前中。午後はテレワークをかなり早い段階から実践してきました。ここ数年、夏の4週間は南半球のニュージーランドと南米でスキー。
とくにニュージーランドは時差3時間で、日本と仕事するのに都合がいい。
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しかし今冬は、夏スキーができなかった分、目標達成のためには、例年以上に集中して滑らなければなりません。すでにスキーの日はすべて予定をブロックしました。
でも、問題がひとつあるのです。それが天気。休みにした日が吹雪になったり、最高に晴れた日が仕事になってしまったり……。
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そこで考えました。人に言うと笑われるのですが、これ、実に画期的です。天気によって休む日を決めるのです。
スキーの場合、12日前には、滑れそうかどうかの予測がたちます。その段階で休むかどうか決めるのです。
例年、滑れる日と、滑れない日の比率はあまり変わりません。変化するのは、それがいつなのか。テレワークが定着すれば、そうした休みの取り方も可能になると思います。
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文・構成=矢野詔次郎
撮影=橋本 篤