“ヒットの法則”とでもいうべき魅力的なキャラクター造形

 2位の義勇もまた、王道のクールキャラだ。口数は少なく冷静沈着だが、実は人情家。悲しい過去を背負い、家族や友の形見を羽織って戦う二枚目であり、TVアニメ版では炭治郎を苦しめた下弦の鬼を瞬殺した圧倒的な手練れだ。

 かと思えば、柱の皆から煙たがられているという“ぼっち属性”も持っている(本人は「俺は嫌われてない」と発言している)。

 『鬼滅の刃』の前身となる『過狩り狩り』や『鬼殺の流』の主人公ともどこか似た雰囲気を漂わせており、いわゆる主人公キャラでもある(ちなみに、もともと炭治郎はサブキャラだったのを、担当編集者との話し合いの中で主人公に昇格させたのだとか)。

 炭治郎の兄弟子であり、TVアニメでは自分の命をかけて、炭治郎と禰󠄀豆子を守るなど、彼にも非常に重要な役割が担わされている。

 そして6位の伊之助は、ザ・少年漫画な「強さをひたすらに求める」キャラクター。自分を育ててくれたイノシシの皮をかぶっているが、容姿端麗な少年。

 最初は「猪突猛進」を絵に描いたような直情型で独断専行タイプだったが、炭治郎や善逸と切磋琢磨する中で、強い仲間意識が芽生えていく

 『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』では彼の成長が非常によく描かれており、炭治郎との共闘で魅せるほか(敵の能力を看破し、炭治郎を救うシーンが熱い)、心が折れそうになった炭治郎を叱咤激励するなど、大活躍する

 7位の煉獄さんは、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の実質的な主人公。本作をご覧になった方はお分かりになるかと思うが、後半からは完全に煉獄さんの話になる。

 彼は、主人公の憧れや理想となるキャラクターだ。包容力とリーダーシップがあり、何より圧倒的に強い。完全無欠のキャラクターでありながら、家族間に問題を抱えていたり、亡き母の遺志を全うしようとしていたりと、非常にドラマティックな人物。

 また、ひとつひとつの言葉に重みがあり、鬼に勧誘された際に毅然と言い放つ「老いることも 死ぬことも 人間という儚い生き物の美しさだ」や、後輩たちにかける「心を燃やせ」「胸を張って生きろ」といったメッセージは、作品の中でも重要なキーとなっている。

 「有言実行」は少年漫画において大切な要素であり、『ONE PIECE』にせよ『ジョジョの奇妙な冒険』にせよ、いわば宣言とも取れる強いセリフが、主人公を主人公たらしめている。煉獄さんの「ここにいる者は 誰も死なせない!」もまた、彼らの魂を継承するセリフといえよう。

 性別や年齢を問わずに高い人気を誇る『鬼滅の刃』だが、このように、各キャラクターたちには人々の心をつかむ“属性”が付加されており、周到に計算された印象を覚える。

 オリジナリティがしっかりと担保されたうえで、“ヒットの法則”とでもいうべき魅力的なキャラクター造形を行っている部分は、吾峠氏の中に蓄積された深い漫画の知識を感じさせる。

 ただ、「王道のキャラクター」だけにとどまらないのが、『鬼滅の刃』の恐るべき才能。本作の中には、大きく分けてふたつ、異質な存在がある。それは、主人公の炭治郎と鬼たちだ。

2020.11.01(日)
文=SYO