vol.36_GUERLAIN

ゲランの香りに息づく
究極のフレンチシック

ゲランの5代目調香師ティエリー・ワッサーによる最新の香り。ゲランのアイコン的な香料であるベルガモット、アイリス、バニラをベースに、調香師こだわりのカーラ ラベンダー、サンダルウッド、ジャスミン サンバックなど稀少な天然香料をふんだんに使用。 つけた人によって香り立ちが変わるのはまさにゲランのレシピの妙! モン ゲラン オーデパルファン 30mL 8,000円、50mL 12,000円/ゲラン

 今回はゲランの香りの世界をブラ魂! CREA世代にはスキンケアやメイクがお馴染みだと思うけど、1828年にパリでフレグランスメゾンとしてスタートしたブランド。これまで世に送り出した香りは1100種類を超えるというから驚き。「MITSOUKO(ミツコ)」、「VOL DE NUIT(夜間飛行)」、「SHALIMAR(シャリマー)」など革新的な名香を次々と生み出し、フレグランスの世界を牽引してきた老舗のブランドなのである。

 「ゲランの香りのクリエイションにおいて最大の強みと言えるのが専属の調香師がいること。ブランド創設者であり初代調香師のピエールフランソワ・パスカル・ゲランから4代にわたりゲラン一族が調香師を務め、2008年、ゲラン家以外のはじめての調香師としてティエリー・ワッサーが就任しました」とはゲラン PRマネージャーの南山絵里さん。

 フランスでは優れた調香師のことを「鼻(ネ)」と称するが、彼らはまさに卓越した感性と調香技術でゲランの伝統を受け継いできた選ばれし鼻。原料(香料)には並々ならぬこだわりがある。

「香りはその人自身を映し出すもの。そして、人の心に最も深く刻まれるもの。香りの本質を知る歴代の調香師がこだわってきたのが稀少な天然香料です。素材ごとに産地を厳選し、生産者と直接やり取りをしながら栽培から収穫、抽出、蒸留まで徹底した管理のもと最高品質の香料が作られています。なかでも“ゲルリナーデ”と呼ばれるゲランが大切にしている香料があって『ミツコ』や『シャリマー』などにも使用されてきました。ベルガモット、ローズ、ジャスミン、アイリス、トンカビーン、バニラの6つ」(南山さん)

 ゲルリナーデはゲランらしさを表現する香料と言っていいかも。それも、ただ入れてあるのとはワケが違う。たとえば、ベルガモットは異なる生産者からとれる最も上質なエッセンシャルオイルをブレンドすることでゲランならではのベルガモットの香りに。アイリスの香料は抽出までに約6年も時間をかけるそうで、1トンのアイリスから2リットルのエッセンスしか採れないお宝級の天然香料。そのほかの香料も素材に応じた抽出方法、ブレンド手法を採用してゲランが求める香りを実現している。素材の特性を知り尽くすからこそできる技!

「表現したい香りのためには合成香料も取り入れて。天然香料と組み合わせることで香りに奥行きが生まれ、香りの持続性を高めることにもなりました。その代表作が1889年に誕生した『JICKY(ジッキー)』。世界初のモダンフレグランスと称された香りです」(南山さん)

 100年以上も前に作られた香りなのに古さを感じさせない。時代を超えて愛され続けるのがゲランの香りの奥深さ。

「5代目調香師のティエリー・ワッサーは就任当初、これまでのゲランの香りのレシピをひもとき、奇想天外な発想が多いことに驚いたと言います。そして、ブランドの品質を守ることも自分の使命だと。現在も植物の保護活動から原料の調達、新たな素材を求めて世界中を飛び回っています」(南山さん)

2017.05.26(金)
文=吉田昌佐美
撮影=吉田健一

CREA 2017年6月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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