(6) ルヌガンガのサービスは?

ルヌガンガで最も洗練された空間であるガーデンルーム。現在立ち入ることはできないが、1つひとつの調度品のセレクトに、バワの美意識を感じることができる。

 ここはバワ財団が管理し、見学や昼食にくわえて宿泊も可能な施設です。価格としては高級ホテルのカテゴリーになりますが、ホテルと同様のサービスは期待できません。20名ほどのスタッフの多くは、ルヌガンガから数キロ圏内に在住する地元の方だそうです。そして庭師などがルヌガンガの近所に住み、その子供もまた同じ仕事をするという形で受け継がれているとのこと。

 また、ここでは外出ひとつとっても門の鍵を持つ人に開けてもらう必要があるなど、何かと時間がかかることも頭に入れておきましょう。

 予約は電話ないしメールで。しかし昼食の予約は返事がなく、結局電話しましたし、宿泊の予約もレスポンスが遅いので、早めの連絡をお勧めします。予約はMichaelというマネージャーが一括して管理しています。

(7) ルヌガンガにエアコンはある?

 各部屋にエアコンが設置されていますが、部屋の広さに比してパワーが足りません。しかしファンと併用すれば日中でも不快になることはないと思います。

 ちなみにバワ自身は、エアコンはもちろんディーゼル発電機の音も嫌い、1970年代までは風力発電などによる時間限定の電灯しかなかったそうです。

(8) ルヌガンガに蚊はいる?

 雨季でも、蚊が出るのは日没の2時間くらい前から日没までが中心でそれ以外の時間はさほど気になりませんでした。しかしシナモンズヒルの屋外リビングルームは、昼でもすぐに出ました。ダイニングや部屋にもファンはあります。なお、すべての部屋に蚊帳は備えつけられています。

(9) ルヌガンガでの過ごし方

バワは敷地内のあちこちに椅子とテーブルを設けた。バワは晩年足が悪く、それぞれのテーブルごとにちがう音色の鐘を置き、使用人を呼んだそうだ。

 Wi-Fiはありません、テレビはもちろんありません。ライブラリーもありません。

 メイン棟に宿泊者専用の共用リビングルームがあり、そこにバワやルヌガンガの大型本が計3冊だけあります。ルヌガンガについての本は必読。バワ自身がどのような考えを持ってこの別荘を作ったのかを明らかにしています。

 ルヌガンガのランドスケープは一つひとつが緻密に計算されており、建築に造詣が深い方はもちろん、そうでなくても考えさせられるネタの宝庫です。湖を眺めながらそれらを読みもよし、または広大な敷地内に点在する椅子で、バワがそうしたように眺めの変化をたのしんでもよいでしょう。

 ふだんはこうしたリゾートにいると、読書のペースがすすむのですが、ここではそれすら惜しいと思えました。ただ、何もせず、景色だけを眺め、自然を感じるだけで一日はすぐに過ぎます。また、機会があれば生前のバワを知る女性のマネージャーに質問するのもよいでしょう。彼女によればバワは社交的ではなく、いつも物静かな人だったそうです。

(10) 結論

 正直、ここに来るまでにも、コロンボ市内のギャラリーカフェなど、バワが手がけた建築をいくつか見ていましたが、その魅力を十分理解していませんでした。

 そこにいったときの印象はあまりありません。また、ルヌガンガの周辺にはバワがてがけたリゾートが数多くあり、今回その一つを訪れました。これもピンと来ませんでした。

 ルヌガンガはそれらとはまったく別物です。商業用の施設であるホテルという制約を外し、ひたすら自分の理念と感性にしたがってつくりあげた空間のすごみというものは、実際に足を運んでみないとなかなか伝わりません。

 適切な表現かどうかわかりませんが、桂離宮とアマンリゾートと天空の城ラピュタを足して3で割った感じが私にとってのルヌガンガでした。

 広大な空間を独り占めする贅沢さもここの魅力です。

 1泊目はゲストが私一人でした。ホテルとして考えればまったくの赤字でしょう。2泊目は建築関係の仕事をしている若い日本人カップルとオランダ人のミドルエイジのカップルが2組。日本人カップルからは建築関係者の視点からみたバワの意味について教えていただきました。

 できるだけ予習してきたほうがより楽しめるでしょう。とにかくいままで多少なりともホテルやリゾートというものを見てきましたがその既成概念を打ち破られました。

 これだけの施設にそれほどの高額ではない料金で泊まれるとなれば今後は人気が高まることは必至。実際に日中は見学客がひっきりなしに訪れていました。ルヌガンガには、できるだけ早く、そして宿泊することを強くおすすめします。

橋賀秀紀(はしが ひでき)
トラべルジャーナリスト。筑波学院大学非常勤講師。東京都生まれ。著書は『エアライン戦争』(宝島社)など。海外渡航歴は200回以上。執筆、講演の依頼、内容の問い合わせは、CREA WEB編集室まで。

 

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2016.07.25(月)
文・撮影=橋賀秀紀