季節の食材を無駄にすることなく「始末の心」で料理に取り組む。 コースの〆に登場する「天然茸のおじや」。米は京都の伏見産「いのちの壱」を使用。 伝統と革新をシームレスに融合する哲学をもとに、進化し続ける井上勝人シェフ。 鶏の出汁で炊く「天然茸のおじや」には富士山で採れる天然キノコも加わる。 調理の際に出る野菜の皮や種を乾燥、粉末にして加えるパン、フォカッチャは、毎回風味も異なる一期一会の味わい。 庭師の鈴木浩樹さんの職人技も加わり、季節ごとの設えで楽しませてくれる。 木、石、花など自然界の要素がバランスよくコーディネイトされたテーブルに心和む。 海藻のメレンゲ、昆布締めにした自家製ジャージーミルクのリコッタに淡路産のウニがのる。ウニと乳製品を合わせることで、ウニ独特のカドが取れ、風味が増す。 丹波の黒豆納豆に、ベルガモットをきかせた自家製の味噌を加えたペーストは大原のエディブルフラワーで彩り、焦がし野菜を練り込んだフォカッチャとともに供される。 アワビは蒸してから炭火で香ばしく焼き、肝と自家製ポン酢、レモンオイルで味わうイタリアンテイスト。花背産のマコモ茸もアワビと異なる食感で旨みが増幅される。 アワビは和歌山の由良産。 明石産の天然車エビは西京漬けにして焼き、エビの頭の味噌を加えたサンゴ色の薄焼き卵でくるむ。上賀茂産のトマトをドライにしたもの、赤柚子胡椒と白みそで味付けを。 レアに焼いた車エビは甘く、震える美味しさ。 琵琶湖の子持ち稚鮎を揚げてから黒文字で燻製に。ピンクのソースは、クラフトビネガーをエスプーマにしたもので、揚げた鮎の美味しさを引き立てる。 冷製パスタの焼き渡り蟹泡ソース。泡のソースにはトマトと昆布のエッセンスも加わり、混ぜながら食べるとえも言われぬ旨みが広がる。 鷹峯産の赤唐辛子を練り込んだ麺。 近江牛のフィレと2年熟成のきたあかりの黒味噌麹つつみ焼き。ソースは近江牛肉醤。メインの近江牛の火入れは、まず塩釜にしてオーブンで温めてから、炭火焼きに。シルキーなおいしさに悶絶。 デザートは城陽産のイチジク。右は焼き城陽イチジクのミニタルト。 井上シェフを中心にしたチームワークの良さが、特別で素晴らしい料理空間を成立させる。