「プロだけど不完全」な茉莉はどう生まれた?
――流星のキャラクター性に対して、茉莉の「プロだけど不完全」という塩梅もリアルでした。茉莉像については黒木さんとどのような話をされましたか。
茉莉は厚労省周りの政策や前例についてはめちゃくちゃ詳しいんです。でも、実社会がどうなっているかという生きた知識に関しては、自分が担当した政策に関係あること以外、ぽっかり抜けている。そういう秘書の方って現実の永田町にいらっしゃるので、作中でも彼女は「小1の壁」という言葉を知りません。
黒木さんとも話し合い、そうした知識の偏り自体を、茉莉のチャーミングさであり、かつ一つの不完全な欠点(人間らしさ)として描きましょうということになりました。
――実社会における国旗破損罪の骨子案でお子様ランチの旗についての話題がニュースに出た数日後の放送回で、茉莉とあかりがハートの旗を立てたお子様ランチを作るなど、現実とドラマのエピソードが奇妙なほどシンクロしている瞬間があり、何度も驚かされます。この「エンタメと現実の距離感」について、佐野さんはどう捉えていますか。
現実に起こっているニュースをそのままドラマにしてやろう、と過剰に意識しているわけでは全然ないんです。ただ、私と蛭田さんの打ち合わせって、時間の半分以上がただの雑談なんですよね(笑)。私が生活の中で見聞きしたことや、家族と話したこと、子供の保育園で起こったことなどを、ひたすら蛭田さんにシェアしたり、蛭田さんが見聞きされたこと、そこで感じたことをシェアしていただいたり。
配信ドラマだと完成してから世に出るまでにすごく時間が空きますが、テレビドラマの最大の強みって、やっぱりこの「即時性」だと思うんです。今起こっている空気を今撮って、すぐに出して、世間からビリビリとした反応が返ってくる。
今私たちが生きている社会を見つめた上で、それを創作にどう落とし込んでいくか。蛭田さんはそれをものすごく研ぎ澄まされた感覚で考えている方なので、私が外で仕入れてきた「メディアの耳」としての材料が、彼女の思考の深さや洞察力とうまく噛み合ったときに、そういう奇妙なシンクロが起こるのかなと思います。
――今はもう、現実の方がエンタメを上回る、「嘘でしょ」と思うようなことがいっぱい起こる時代ですからね。
このドラマの脚本を書き始めた頃は、まさか現実の社会がこんなにも大変なことになっているとは思いもしませんでした。本当に、何か大きなものにうまく采配されているような、必要なタイミングで必要な形でこのドラマが出ているような感覚すらあります。
