“その部屋”にあった奇妙な貼り紙

 寮長がなんらかの事情を知っているのでは? と、残った住人や近隣住民から矛先が向けられたこともあったそうですが、当の寮長は知らぬ存ぜぬの一点張り。

 結局、その寮は使っていた中小企業が倒産したことも重なって、気がつけば廃墟に成り果ててしまったのだといいます。

 この不気味な逸話にUさんら一同は大盛り上がり。念のため言い出しっぺのAさんが今も建物があるのかを事前に確認した後、後日そこへ肝試しに行くということなりました。

 しかし、肝試し当日の夜。仕事を終えて、行きつけの居酒屋にポツポツと顔を出すころには、昨夜の熱気は鳴りを潜めていたそうです。結局のところ、こうした心霊スポットに突撃するのはその場のテンションが肝心であり、数日空けて落ち着いてしまった後に残るのは、聞かされた薄気味悪い逸話と恐怖だけなのです。

 とはいえ、不良で鳴らした男たちが土壇場でそんな心境を吐露できるはずもなく、一同は口数少なにビールを煽っていました。さらに皆の不安を煽ったのは、言い出しっぺだったAさんがおずおずと語り出した、例のアパートを確認しにいったときの異様な様子でした。

 そのアパートは今でも聞いた場所にあったそうなのですが、建物の周りには黒と黄色の立ち入り禁止ロープが張り巡らされており、そのロープにガムテープで黒いマジックで書き殴られた奇妙な紙まで貼られていたというのです。

【2階の角部屋には誰もいません】

 静まり返る一同の脳裏には、例の寮長が今もそこにいるのではないか、という嫌な想像が浮かんだといいます。

「じゃあさ、余計行くしかねぇな」

 凍った空気を打ち払うように言い放ったのは、グループで一番年上だったE先輩でした。

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