学校給食にも登場するソウルフードに

 やがて支援は朝食のみとなったが、パンの原料が底をつくのは時間の問題だった。

「そんな時、郡山にある阿部製粉の社長さんがわざわざ店に来てくれたんです。父の代から60年ほどのお付き合いのある製粉所なんですが、“粉はいくらでも提供します。代金は商売がちゃんと成り立った時に払ってくれればいい”と言ってくれて……。そのおかげで、御用納めの12月28日まで一日も休むことなく、毎朝6時に1000食分のパンを避難所に届けることができました」

 その心強いサポートが原動力になり、仮設の小学校・中学校ができた時にも給食を納めることができたと話す佐藤さん。さらに、10月17日に南相馬の学校で授業が再開された際も、これまでと変わらず給食用のパンを焼き続けることができた。

 震災を乗り越えた“よつわり”は、2020年からはソウルフードとして市内の中学校の給食に年に一度登場するようになり、南相馬では知らない人がいないほどの存在に。さらに、甘さを控えた「コーヒーあん」や「うぐいすあん」、土曜限定の「高級よつわり」など、新しい味も加わり、ファン層にも広がりを見せている。

 すると、その評判を聞きつけ、「よつわりパン」をつくり始めるパン屋も出現。一時は市内だけでなく浪江や小高にも広がり、その数は7店にまでのぼったという。

「実は、よつわりパンは商標登録をしていて、本来は同じ名前の商品をつくることはできないんです。でも、ある時、仙台でパン屋さんを始めるという、私と同い年の男性から電話をもらったことがあって。学生の頃、うちのよつわりを食べて、おいしくて感動した記憶がずっと残っていると。それで自分の店を持つことができたので、どうしても“よつわり”を出したいという熱い思いを伝えてくれて……。

 もともと、“喜んでもらいたい”という思いから生まれたパンですから、いろんなところでつくってもらえるなら、その分、笑顔も広がる。なにより、うちが元祖ということは地元の人がわかってくれているので、“よつわりの名前も使っていいですよ”と伝えました」

「震災の時は、“これでもうおしまいだ”と思いましたが、よつわりパンのおかげで生き残れたのかなと、今になってしみじみ感じます。

 南相馬にもスーパーやコンビニが増え、個人経営のパン屋はだいぶ少なくなりましたが、うちは息子ががんばってくれている。ありがたいことに75周年を迎えることができたので、100年続いてくれたら。それが今の願いです」

 震災を乗り越え、世代を超えて愛され続ける「よつわりパン」。その原点であるフラワーパンの名にふさわしく、まるで一輪の花のように今日も誰かの心にそっと寄り添い、笑顔を咲かせている。

原町製パン

所在地 福島県南相馬市原町区本陣前3-1-5
電話番号 0244-23-2341
営業時間 9:00~18:30
定休日 日・月曜
Instagram @haramachiseipan