中学校の修学旅行の思い出は……
そういえば、中学2年生の頃。修学旅行で、お参りすると美しくなれるという「美御前社」に立ち寄ったことを思い出した。こんなにたくさんある観光地の中からこの場所を選ぶなんて、なんとも思春期らしい。あの頃はニキビに悩んでいて、毎晩鏡とにらめっこをしていたっけ。せっかくなので、お参りすることにする。
「お陰様で肌荒れもすっかり良くなり、楽しくやっております」
少しずつ当時の記憶が蘇ってきた。乗り物酔いをしやすくて、新幹線での移動が不安だったこと。誰と同じ班になるか、一喜一憂していたこと。スカートの丈の長さや靴下の色まで決められ、窮屈で仕方なかったこと。全てが愛おしく思えた。
そのまま祇園町を抜けようとすると、ちょうど居合わせた外国人観光客の団体に、カメラを向けられた。どうやら着物で歩いている日本人女性というだけで、芸妓のように見えるらしい。恥ずかしいような申し訳ないような気持ちになり、逃げるように早足で通り過ぎる。歌舞練場に着くと、まず舞妓さんが点ててくれたお茶とお茶菓子をゆっくりいただいた。席について、開演を待つ。芸舞妓さん達が舞台に登場すると、会場の空気がパッと華やいだ。舞や演奏は美しく、お芝居もわかりやすく、どの演目も知識がなくても十分楽しめた。揃いの衣装を着た芸舞妓さんが最後に一斉に踊る「総をどり」は圧巻で、あっという間の1時間だった。
外に出るとすっかり暗くなっていた。急に冷え込んできたので、予約をしてある和食屋までタクシーで向かう。いつもは自分でお店を選ぶことも多いけれど、今回は全て2人におまかせ。そんな旅も心地よい。途中で、制服姿の学生達とすれ違った。まだ一度もカラーリングしたことがないであろう黒髪は、艶があって美しい。
急ぐ必要なんてなかったのに、どうしてあんなに焦っていたんだろう。どんなに立派になっても、若さを取り戻すことはできないのに……。
