この記事の連載

 物騒な事件が絶えない令和ニッポン――。42年間にわたり、凶悪犯罪の第一線で捜査を担当した通称「リーゼント刑事」秋山博康氏は、「他人ごとではないで!」と、国民全員の防犯意識に“喝!”を入れている。

 「魂の殺人」といわれる性犯罪。どこからが性暴力? ストーカーやデートDV、「万が一」に備えた証拠の残し方まで。自身はもちろん、家族を守るためにも、最新の犯罪手口とその対処法を心得たいものだ。

 6月24日(火)発売、秋山博康氏の新刊『元刑事が国民全員に伝えたい シン・防犯対策図鑑』(KADOKAWA)から一部を抜粋してお届けする。


恋人間のデートDVの場合は直接取り締まる法律がない

 配偶者や恋人同士などの間で起こる暴力、DV(ドメスティック・バイオレンス)は被害が表沙汰になりにくいぶん、深刻な問題や。

 なかでも恋人からの暴力は最近では「デートDV」と呼ばれる。ワシが若い頃にはなかった言葉だが、内閣府が行った調査では、女性の約6人に1人がデートDVの被害経験があると答えている。さらにNPOの調査によれば、交際経験のある中高生の4割に被害経験があり、2割超は「自分が加害者になったことがあるかも」と思っているという結果が出ておる。

 若い世代の間では、「デートDV」の認識が広まっているらしい。少し前にはアイドルの女性がInstagramのストーリーズに、《ほんとに彼氏と別れたいのに別れられません、別れ話をすると顔が腫れるまで殴ったり蹴られたりします助けてください》という悲痛なメッセージとともに、彼氏に殴られた写真を投稿したことがあった。そしてその翌日には恋人は暴行容疑で逮捕された(2人は双方の代理人弁護士を介して後日和解が成立)。恋人を殴る・蹴るなどは傷害罪(刑法第204 条)や暴行罪(第208 条)にあたる。しかしDVはなにも殴る・蹴るといった身体的な暴力だけでなく、以下の5つに分類される。

● 身体的暴力
● 精神的暴力
● 性的暴力
● 社会的制限
● 経済的暴力

 夫婦間のDV には「DV防止法」という法律があるが、恋人間のデートDVの場合は直接取り締まる法律がないんや。ただし加害行為があれば刑法や民法で対処できるから、被害に遭ったら遠慮せず警察でも交番でも飛び込んでほしい。

2025.06.21(土)
文=秋山博康
本文挿絵=むらまつしおり