この記事の連載

自分のマイナスばかりに気を取られてしまうと……

――ヴィクトワールさんがご自身をよく知って、ご自身に合ったお手入れをされているのがよく分かりました。

 自分を知れば、お手入れも変わってくるでしょうし、もっと自分に自信を持てるようになると思います。

 これはとてもフランス語的表現なのですが、「部屋にゾウがいる」という言葉があるんです。「誰もがその存在に気づいているけど、触れないタブー」というような意味です。自分自身の欠点が「部屋の中のゾウ」のように大きな存在になって、結局そのマイナスにばかり気を取られてしまう。

 そうなると他のことに集中できませんし、人間関係にも集中できない。自分を悪い方向にばかり見てしまい、負の連鎖のようになります。

 年齢を重ねることが素晴らしいことである理由のひとつに、ゆったりと自分に時間をかけられるようになることがあると思うのですが、そうすることで、より自分に自信を持てるようになるのではと思います。
 

――日本では年齢を重ねることはマイナスになると考えられがちで、“年齢を重ねること”や“マチュアなこと”がプラスになるフランスにはかなり後れを取っている気がします。

 最近はフランスでも「若いことがいいこと」という若さを称える方向になりつつあるのは事実です。ただ、若いことはもちろん素晴らしいけれども、年齢を重ねることも素晴らしいこと。それらはスタイルがまったく違うのだから、比べても仕方がないことですね。

2025.03.21(金)
文=前田美保
撮影=橋本 篤