『枝豆とたずね人 ゆうれい居酒屋5』(山口 恵以子)
『枝豆とたずね人 ゆうれい居酒屋5』(山口 恵以子)

 皆さま、『枝豆とたずね人 ゆうれい居酒屋5』を読んでくださってありがとうございました。このシリーズもいよいよ節目の第五巻を迎えることが出来ました。上手(うま)く行かないシリーズ物は四巻目で失速すると言われていますので、取り敢えず最初の山を越えることが出来て、ホッとしております。

 嬉しいことに『ゆうれい居酒屋』は今年、韓国で翻訳出版されました。『孤独のグルメ』『深夜食堂』がヒットしているので、日本の居酒屋小説もイケるのではないか……と思われたようです。柳の下にそう何匹もドジョウはいないでしょうが、韓国でもお酒片手に『ゆうれい居酒屋』を読んでくれる方がいることを、祈るばかりです。

 本書を読んでお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、実は第一話には『食堂のおばちゃん』のはじめ食堂の往年の姿が、そして第五話では同シリーズのレギュラーメンバー・料理研究家菊川瑠美(きくかわるみ)の話題が登場します。実は『ゆうれい居酒屋』シリーズの第一作と第二作にも、『婚活食堂』の登場人物である大物占い師・尾局與(おつぼねあたえ)がちょっと出てくるのです。

 数年前に「シリーズのメンバーが、別のシリーズに顔を出す掌編を書いてください」という企画があって、やってみたところとても楽しく、読者の方にも好評でした。

 それがきっかけで各シリーズの担当編集者が、お互いライバル関係ではなく、協力しながら三シリーズを売り伸ばしてゆきましょうという話になり、「食と酒」の三シリーズの累計発行部数はめでたく百万部を突破しました。柔軟な発想で努力してくださった編集者と出版社には、感謝しかありません。

 七月発売予定の『食堂のおばちゃん 16』では、第一話に『婚活食堂』の主要メンバーが顔を出し、第四話には『ゆうれい居酒屋』の舞台・新小岩(しんこいわ)と東京聖栄(せいえい)大学の話題が登場します。作者の独りよがりのお遊びという側面はありますが、三シリーズすべてを読んでくださる方も多いので、こういうシリーズをまたいだコラボレーションは、これからもやっていきたいと思っています。

2024.08.13(火)