この記事の連載

◆富士山麓のIDEBOKU牛乳

 いつの季節も変わらず一品目に提供されるのが、室岡さんの故郷である静岡県朝霧高原から届けられる、「いでぼく」(代表の井出行俊さんは、室岡さんの同級生!)の牛乳を使ったデザート。

 さっぱりとしたホルスタイン乳はプリンに、濃厚なジャージー乳はソフトクリームのようなジェラートに。ミルクのピュアな香りとクリアな味わいが、体にすーっとなじんでいきます。フレッシュなオリーブオイルと塩をかければ、ミルクの甘みがぐっと引き立ち、また違ったおいしさに。

◆藏光さんの八朔と数種の柑橘、甘酒ジェラート

 クレメ・ダンジュ(レアチーズムース)に、果実味たっぷりの清見オレンジとデコポンのジュレ、キンカンのコンポート、フレッシュな八朔、清見オレンジとデコポンを重ね、ブーケのように。その上に、少しショウガを加えた甘酒(静岡「白隠正宗」)のジェラートをのせ、薄いアメを重ねてお花をあしらい、柑橘「媛小春」の皮をふりかければ、みずみずしさと清々しさいっぱいのひと皿に。

 アルコールペアリングは、柑橘と相性ぴったりなドイツのリースリングワインを。香りがふくよかに膨らみます。

◆淡路島産 新玉ねぎのムースとにんじんのチュイル

 3皿目は、料理人経験のある室岡さんならではの、野菜を使った料理のようなひと皿。

 新タマネギのムースにパースニップのピュレが深みを添え、「ひとみ人参」の泡、羽衣のように薄い3種のニンジンのチュイール、新タマネギのアイスパウダーとやさしく混じり合い、まるでなめらかでふんわりとしたヴィシソワーズのよう!

◆熟成キタアカリを練りこんだ焼きたてのフォカッチャ

 目の前のオーブンで焼き上げられるフォカッチャには、オリーブオイルとローズマリーをかけて。生ハムをのせて熱々をほお張れば、外はカリッ、中はフワッ、生ハムの旨味と塩気がジュワーッと広がって、後半にむけての心地よいリセットに。

 アルコールペアリングは、ブルゴーニュのドメーヌ J.A.フェレ「ピュイィ・フュッセ」(1993!)を。深みある味わいが体にしみわたります。

◆水カカオ

 再びスイートなデザートの世界へと引き戻すひと皿は、室岡さんの代表作。

 カカオパルプとカカオマスーの極薄チュイールと、チョコレートの泡の下から現れるのは、コロンビア産深煎りコーヒーのグラニテと、ミルクではなく水を使ったチョコレートのジェラート、カカオのエキスのジュレ。

 ローストしたカカオニブが食感のアクセントを添えます。そのみずみずしさとクリアさといったら!「カカオのフルーティーさや酸味を表現しした、“飲めるカカオ”です」と室岡さん。

◆愛媛県産せとかのスフレ

 ジューシーで味わい濃厚な「せとか」のスフレは、せとかの皮に生地を流してオーブンへ。熱々をいただくと上はふわふわ、食べ進めると器のせとかからも果汁が染み出てトロトロ、じゅわじゅわ、果実味いっぱい。

 「さらに途中でキャラメルソースをかけると、クレープ・シュゼットみたいなおいしさが楽しめます」と、室岡さん。皮ごと使ったせとかのソルベと交互に味わえば、体じゅうがせとかの香りに包まれて、すがすがしさいっぱいに。

◆イチゴのヴァシュラン

 イチゴは「あまりん」と「とちおとめ」を使用。「とちおとめ」のソースにのせたメレンゲ中には、ピスタチオのセミフレッドと、ローストしたピスタチオ、フレッシュなとちおとめが。

 その上にフロマージュ・ブランのクリームと輪切りにしたフレッシュなあまりん、2種のイチゴのジェラートをのせれば、イチゴの甘酸っぱさが弾ける愛らしいひと皿が完成! イチゴの力強い味と香りに圧倒されます。

◆チュロス

 室岡さん自身が大好きで、どうしてもやりたかったという「チュロス」。揚げたてにシナモンシュガーをまぶし、外はさくっ、中はふわとろの食感が魅力的。

◆イチゴマカロン/さつまいもモンブラン

 お茶菓子には、カスタードクリームとイチゴ、ラズベリーとイチゴのジャムを重ねたマカロンと、焼き芋にしたさつまいも「紅はるか」のモンブランを。パクっとひと口で素材のおいしさが力強く広がります。

 「コースとして、最初はニュートラルな味わいから入って、2品目はさっぱりと、3品目と4品目はお食事っぽいもので意外性と変化を出し、5品目で甘いものの世界へ再び戻り、6~7品目は王道のおいしさで満足感を感じていただくという、メリハリと流れのある組み立てにしました」と話す、室岡さん。

 「これからも私にしか出せない世界観やコースを追求して、お客様に楽しんでいただきたいと考えています」。

Haruka Murooka

所在地 東京都港区南青山1-21-9 LUXE南青山1F-B
電話番号 03-6434-9168
営業時間 13:00〜、17:30~
定休日 月・火曜
料金 おまかせコースのみ。ノンアルコールペアリング17,600円、アルコールペアリング23,100円(2024年4月11日~5月5日)。価格は季節ごとに使う食材によって変動あり。
Instagram @haruka.murooka
※オンラインから要予約

オーナーパティシエ 室岡春香さん

1982年静岡県生まれ。フレンチの料理人として経験を積んだのち、「リビエラ青山」でイタリアンドルチェやレストランデセールを学び、シェフ・パティシエに就任。この頃からデザートコースイベントの開催を重ねる。銀座「リストランテオット」、代官山「WAJO」、広尾「薫 HIROO」を経て、2024年「Haruka Murooka」を独立オープン。

次の話を読む代官山「ペイサージュ」2階のシェフズテーブルで密やかに味わうデザートコース【全品紹介】