この記事の連載

敬意をしっかり持ち、向き合い続けました

――テンポやリズムを意識的にずらしたということですか? なんのために?

 本作では「かみ合わない」のが完成形だからです。『初めて会ったヤクザにいきなりカラオケに連れてこられた15歳』という状況で、両者の会話がかみ合うはずがないのです。台本も台詞も存在し、どうすれば良いか分かっている状況で「かみ合ってはいけない」というオーダーはとにかく大変でした。

――原作では、中学生の聡実くんとヤクザである狂児が一緒にカラオケボックスにいる、つまり「かみ合わないふたり」が同軸に存在することが、前提条件になっています。「ふたりでいる」という設定を「かみ合わない」ものにするには、デフォルトを崩す必要があるということですか?

 『カラオケ行こ!』は現実にはあり得ない劇的な設定を、自分事のセリフで表現することで「なさそうで、ある」と感じられる絶妙なリアリティを生み出しています。その『カラオケ行こ!』の世界観のなかにしかないリアリティを本作ではどのように表現していくか。そこも含めて、全部署が原作に対する敬意をしっかり持ち、「映画化」と向き合い続けました。

2024.01.17(水)
文=相澤洋美
撮影=平松市聖
ヘアメイク=石邑麻由
スタイリング=三田真一(Kiki inc.)