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「これは生半可な気持ちではできない」

 『未来』という作品は、小学生から高校生になるまでの主人公が、手紙で未来の自分に語りかけるというスタイルが中心なので、まずはこの幅広い年代を違和感なく読んでくださる方でなければいけないという難しさがありました。

 そのうえ、この作品は、未来の自分にも「つらいけど頑張って乗り越えていくよ」と、寄り添うような語りかけができる方に読んでいただきたかった。そうしたことを考えていくと、お願いしたい方はのんさんしか考えられなくて。ですから、お忙しいだろうと思いながらも、「のんさんがいいです」と強くお願いしていたんです。お受けいただけて、このうえなく光栄です。

のん めちゃめちゃプレッシャーもあったんですよ。最初は「やったことがないことに挑戦する」という好奇心と、湊先生のご指名という嬉しさが勝っていたんですけど、作品を読み込めば読み込むほど、どんどん自分の中のハードルが上がり、勝手ながら使命感を持って「これは生半可な気持ちではできない」と思いながら朗読していました。

 私のほかのAudible作品では、すでに映像化されている作品の出演者の方が朗読してくださっているものもありますが、それだとその方が演じたイメージが頭に浮かぶ読者が多いと思います。一方、映像化されていない『未来』は、読んだときに自分の脳内で変換したイメージがすべてです。のんさんは、そのひとりひとりの『未来』のイメージを、想像以上に膨らましてくれるんじゃないかと、期待していました。

 実際に朗読していただいたAudibleを聴いたら、私の期待なんぞをはるかに超える素晴らしい作品に仕上げていただいて、のんさんのすごさをあらためて実感しました。それと、「のんさんに読んでもらいたい」と思った自分ってやるじゃん、と思いました(笑)。

のん え~、照れます(笑)。でもおっしゃるとおり、朗読は1人の人が全部読んでいくので、作品の世界観も全部背負わなきゃいけなくて、責任が重くなる。そこは、やっていて難しいと感じたところでした。

 お芝居とはまた違った難しさですか?

2023.11.17(金)
文=相澤洋美
撮影=深野未希