この記事の連載
- 吉田美月喜さんインタビュー #1
- 吉田美月喜さんインタビュー #2
本当の伯母と姪のように…
──どんなダメ出しですか?
実はユーカラって「歌」ではなく「物語」なんです。だから、同じ単語でも場面によっては暗く謡うこともあるし明るく謡うこともあるとか、この文章は明るい表現に使うフレーズだとか、ていねいに意味を教えていただきました。
「自分の思うように、会話をするみたいにやってくれたらいいよ」とアドバイスもいただき、はじめはただ音として聴いて覚えていたものが、「これは物語であり、会話なんだ」と理解できたことで、ちょっとずつ“本物”らしく謡えるようになったのではないかと思います。
──もともと歌はお好きなんですか?
はい、好きです。CMではコマーシャルソングをワンフレーズ歌わせてもらったこともあります。でも、お仕事としてちゃんと歌うというのは初めてだったので、緊張しました。しかも最初の歌の仕事がユーカラで、そのうえ島田歌穂さんとのデュエットって……すごいハードルですよね(笑)。
──ミュージカルで世界的に活躍している島田歌穂さんとのユーカラの共鳴は、初めてとは思えないほどお見事でした。本当に血のつながりのある肉親なのでは、と思えるほどの抜群のコンビネーションは、どう構築されたのですか?
島田さんとは、ロケ地の北海道で初めてお会いしたんですけど、とにかく私がガチガチに緊張してしまっていたので、役と同様、本当の伯母と姪のように、何かと気にかけてくださいました。テル役を演じきり、ユーカラを謡い上げることができたのは、島田さんが大きな愛で支えてくださったからだと思います。
島田さんがユーカラを謡うと、意味がわからなくても説得力があって、すごく引き込まれるんですよ。間近で聴かせていただいて、あらためてすごい方だなと思いました。でもその島田さんでも、「ひとつひとつの音が集まってできる音楽を、感覚で表現するのは難しい」とおっしゃっていたので、島田さんに引き上げていただきながらユーカラを謡えたことは、私にとって大きな自信になりました。このユーカラを聴くだけでも心が震えますので、ぜひ劇場のいい音響で聴いて、見ていただきたいですね。
『カムイのうた』
2024年1月26日(金曜)よりヒューマントラストシネマ渋谷他にて公開
配給:トリプルアップ
©シネボイス
出演:吉田美月喜、望月歩、島田歌穂、清水美砂、加藤雅也
監督・脚本 菅原浩志
プロデューサー:作間清子
主題歌:島田歌穂
製作:シネボイス
製作賛助:写真文化首都「写真の町」北海道東川町
上映時間:135分
https://kamuinouta.jp/
2024.01.26(金)
文=相澤洋美
撮影=杉山秀樹