正直、白髪が染まるシャンプーはオススメできないワケ

 まずお伝えしたいことは、美容師からすると「白髪が染まるシャンプー」はあまりオススメできない、ということです。その一番大きな理由は、メーカーや商品を問わず、カラーシャンプーはそもそもそんなに染まらない、というのが現実だからです。シャンプーによって染まった白髪の色味は、全体の黒髪や茶髪に薄く馴染む程度にしかなりません。

▼シャンプーの泡はまんべんなく行き渡る気がするが…

 次に、シャンプーの泡で髪を染めることが難しいということです。「シャンプーの泡で染まる」という宣伝文句を聞くと、手軽な上に「まんべんなく髪の毛が泡を纏えるので、しっかり染まってくれそう」という印象を持つかもしれません。ですが、美容師からすると、「泡での着色」はムラになりやすく、ちゃんと染まることがないという認識です。

 美容院での白髪染めと比較してみましょう。美容師は白髪染めの際、薬剤をたっぷり使って白髪を“薬剤に埋める”ように塗布します。これは、黒髪よりもハリがあり、薬剤が浸透しにくい性質のある白髪にしっかり付着させるためです。

 対して、シャンプーの泡は、髪全体に行き渡らせたとしても「隙間だらけ」の状態です。どれだけキメ細かい泡であっても、泡に“白髪を埋める”ことはできません。

 これは白髪が染まるシャンプーに限らず、セルフカラーの「泡カラー」で白髪を染める際も同様です。そもそも「泡」は白髪にちゃんと付着しないので、染まりにくいのです。

▼「シャンプーで染まる」には限界がある

 そして、「シャンプーを重ねるほど染まる」という説明を基に毎日使っていても、ある時点で染まり具合には限界が来ます。

 もっとしっかり染まってほしいから、シャンプーを洗い流す前に長めに時間を置いてみよう……と思う方もいるかもしれません。しかし、シャンプーは、髪や頭皮の汚れを洗い流す「洗剤」です。その性質上、洗浄効果のある要素がメインです。そのため「髪の表面に色素を付着する」効果があっても、洗浄効果と並行している状態になります。ですので、泡を規定時間以上に長く放置してもメリットはありません。

 繰り返しになりますが、現状では「シャンプーを重ねるほど染まる」と謳っていても、白髪はほんのり染まる程度で、それ以上に濃く染まることはないでしょう。

2023.10.29(日)
文・イラスト=操作イトウ