ミステリー④ アル中の症状がかなり深刻らしい

 アルフィーを調べていると、「アル中」という言葉にたどり着く。決して酒に溺れているメンバーがいるわけではなく、アルフィーのファンを指した用語のようだ。

 アル中の主な症状として、まず、ファン歴2、30年ぐらいなら「まだ」20年……「まだ」をつけてしまという。いやいやじゅうぶん長いですって! さらには、高見沢さんのハデハデエレキギターが世間でもデフォルトだと思いこみ、普通のエレキギターを見ると「地味すぎる」と驚いてしまう方もいるそうだ。

 中毒症状、かなり深刻だが、なんだかとても楽しそうだ。

 そして、最後のアルフィーミステリー。

 「カッコいい」「美しい」という言葉以外を探したくなる。今まさに記事を書きながら、彼らの音楽を聴いているのだが、3人の歌声は本当に美しいしカッコいい。

 「一月の雨を忘れない」、これは前から好き好き。転調で泣ける!「通り雨」、初めて聴いたけど心に沁みるいい曲じゃないか。「白い夏バレンシア」、色気凄まじいな! 「星空のディスタンス」、改めて名曲過ぎる。いやもうベイビーカンバック!

 桜井さんのハリのあるイケボ、坂崎さんの安定したマイルドボイス、高見沢さんのハイトーンボイスには、なぜか新しい言葉を探したくなってウズウズするのだ。

 彼らのハーモニーは「宇宙しい(うちゅくしい)」――。ううむ、山田君がダッシュで座布団を取りに来るのが見える。もう少し探します!

 ある日突然聴きたくなったアルフィー。私は無意識に、しかし確実にその歌声に励まされていたことに気付いた。

 だからこそ思う。もっと彼らの歌をたくさん聴き、彼らの50年間をしっかり調べてから記事を書くべきだったのかもしれない、と。

 しかし、そんな順番も吹っ飛んでしまうほど、猛烈に羨ましくなってしまったのだ。数十年単位で彼らを追いかけている人たちを。

 「(ファンになって)まだ30年」「まだ40年」。なんとすてきな応援なのか、と思う。アルフィーもファンも、長い道のりを楽しんでいる。力まず、どこまでも広がる星空を愛でるように、これからもずっとコンサートやライブを楽しんでいくのだろう。

 12月23日の日本武道館公演で、公演数100本を達成予定。

 「まだ50年」「まだ60年」、彼らのやさしい音楽は、きっと終わらない。

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田中 稲(たなか いね)

大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡出る単1008語』(誠文堂新光社)など。
●オフィステイクオー http://www.take-o.net/

Column

田中稲の勝手に再ブーム

80~90年代というエンタメの黄金時代、ピカピカに輝いていた、あの人、あのドラマ、あのマンガ。これらを青春の思い出で終わらせていませんか? いえいえ、実はまだそのブームは「夢の途中」! 時の流れを味方につけ、新しい魅力を備えた熟成エンタを勝手にロックオンし、紹介します。

2023.09.27(水)
文=田中 稲