サプライズに満ち溢れた個性派ホテル

 ここ数年、アートやカルチャーシーンで新しい風が吹いている南アフリカ。ホテルにおいても、その潮流は同様。話題のホテルが次々と登場している。

 ヨハネスブルグの中心地、アートをテーマに再開発したマボネン地区。メインストリートのすぐ近くにある「12ディケードホテル」は、全ゲストルームの内装がまったく異なるという個性的なホテルだ。12室ある部屋はそれぞれ、1886~2006年に起きたできごとやムーブメントがモチーフになっている。

 たとえば、「1976~1986」と名付けられた部屋。一見するとシンプルでモダンな客室だが、カーテンを閉めて外光を遮断すると、ある仕掛けが現れる。窓に設置されたピンホールカメラのレンズを通して、上下反転した外の景色が、部屋の中央にあるスクリーンに映し出されるのだ。投影されるのは、地上173mの超高層マンション。75年の建築当時は白人富裕層の象徴とまで言われたものの、90年代に衰退し荒廃、そして近年ふたたび高級アパートとして整備された、栄枯盛衰のストーリーを持つ建物だ。

時代を象徴する建物が、上下反転で映し出されるという内装

 ルームネーム「1996~2006」のモチーフは、“歩み始めた民主主義”。部屋の奥に行くほど開放的で明るい雰囲気になり、一番奥にある階段を上ると、一面の窓の外に発展する街を一望するベッドスぺースがある。このほか、ゴールドラッシュに沸いた時代を写真で展示した部屋や、アパルトヘイトをコミカルに表現した部屋なども。部屋のインテリアは、ヨハネスブルグの過去と現在を映し出す現代アートでもある。ともすれば、メッセージ色が強すぎて落ち着かないようにも思えるが、その心配は無用。清掃が行き届いた部屋は快適だし、セキュリティーも万全だ。

左:1906~1916年、ゴールドラッシュ時代をテーマにした部屋
右:ホテルのいたるところに写真やポスター、オブジェが並び、美術館のよう

 過去の辛い歴史も隠さず、アートに変えてしまうのは、南アフリカの底力なのかもしれない。「ソウェトホテル」は、かつてタウンシップ(政策で強制的に定められた非白人居住地域)だった場所、ソウェト(SOWETO)に建つラグジュアリーなホテルだ。黒人解放運動指導者であるアルバート・ルツーリの名を冠したスイートルームや、ネルソン・マンデラ元大統領をモチーフにした部屋など、随所に新しい南アフリカらしさをちりばめている。

ネルソン・マンデラ元大統領をモチーフにした部屋はクラシカルで居心地もいい。スタッフのホスピタリティーも一流だ

12 Decades Hotel 
所在地 286 Fox Street, Maboneng, Johannesburg
電話番号 +27-11-026-5601
URL http://www.12decadeshotel.co.za/

Soweto Hotel
所在地 Cnr Union Ave & Main Road, The Walter Sisulu Square of Dedication, Kliptown, Soweto, Johannesburg
電話番号 +27-11-527-7300
URL http://sowetohotel.co.za/

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2014.01.05(日)