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エミューは20~30年生きる

──自治体への届け出は不要とのことでしたが、飼うための特別な道具や設備などはどの程度必要だったのでしょうか。

B子さん それが一切なかったんです。「エミューが走り回れる30平米以上の土地と雨風がしのげる場所があればいいですよ」と言われただけでした。気性は温厚で飼育もそれほど難しくないし、走り回れる土地があればよいと教えていただき、だいぶハードルが下がりました。

 でも決め手になったのは、成鳥になれば20〜30年生きる長寿だと聞いたことです。自分の年齢を考え、この先30年を一緒に過ごすために、一日も早く迎え入れようと決断しました。

 そういうわけで、予約をし孵化を待ちました。雛のうちは身体が弱く、病気をしやすいそうなので生後2カ月ほどして体調が少し安定してから、健康で、人慣れしそうな雛を選んでもらいました。

──エミューが家に来たとき、ご近所の方の反応はいかがでしたか?

B子さん 「鳥がいるね」「これはダチョウみたいだけど、なんて鳥?」と、意外にあっさりした反応でした。エミューは比較的穏やかと聞いていましたが、そのなかでもことさら穏やかで人なつこい個体を選んでもらったので、ご近所迷惑になるようなことも、いまのところありません。ニワトリと違って大声で鳴かないので、それも安心です。

 気をつけているのは、鳥インフルエンザ対策でしょうか。エミューと遊んだあとは、ご近所の方にも必ず石けんで手を洗うよう伝えています。また、逃亡にも気をつけています。

 ご近所の方ではないですが、オーストラリア在住の友人にエミューを飼い始めたと伝えたら「日本でも藪からエミューが出てきたのか」と驚かれました。オーストラリアでは野生にいるのが当たり前の鳥なので、「わざわざ飼うなんて珍しい」と言われました。

──それだけ珍しい鳥だと、盗難のおそれなどはないのでしょうか。

B子さん 盗難より、害獣に襲われるほうが心配です。このあたりは、野生のサルやシカ、イノシシ、ハクビシンなどがいて畑を荒らすことがあるので、雛の間はそういう害獣に襲われないように、しっかりとケージに入れています。

 成鳥になったら、逆にエミューがいることが害獣への威嚇になるので、畑の見張り番をしてもらおうと思っています。

2023.08.12(土)
文=相澤洋美
撮影=細田忠