人が育っていく場をつくる

遠山 プロダクトデザイナーになりたかったということでしたが、料理にもデザインの要素はありますか?

笹島 そうですね、料理もやはりデザインです。僕はメニューの試作はしないで、見切り発車してだんだん修正しながら完成させていきます。各店には、料理のタイトル、例えば「寒ブリといろんな大根・レッドキャビア」というようなものだけ送る。そうすると各店のシェフやマネージャーが考えてつくるんですが、僕の思ってたのとぜんぜん違うものもできてきます。でもそれを全否定しないで、アドバイスして肉付けしていくんです。そうすれば、同じ料理でも、各店のシェフやマネージャーの意見が入って、それぞれちょっと違うオリジナルになる。

遠山 ほう、それぞれにシェフに任せるんですね。

笹島 そうするようになったのには、訳があるんです。以前、あるオーナーから料理長を探していると聞いて、うちで12年間無遅刻・無欠勤で働いていたシェフを推薦して、彼はそのお店で働くことになったんです。するとある日、オーナーから電話がかかってきて、彼が僕とまったく同じものをつくると言うんです。それで彼に「まったく同じではなくて、自分のオリジナルを入れてごらん」と言ったんですが、彼にはそれができなかった。それまで僕が言う通りにやってきたからなんです。

遠山 手取り足取り教えてきたことが、彼にとってはよくなかった。

笹島 それでそのやり方はやめました。代わりに人が育っていく場をつくることにしたんです。例えば、「鴨のフランボワーズソース」というのはよくある料理ですが、僕は一度もつくったことがない。だから、僕の店でそういうのをつくられても困る。そういうときは、「フランボワーズじゃなくて、柿とかを使ってみたらどう?」とアドバイスします。また、料理は工程が大事。食材のさばき方、下処理の仕方でぜんぜん違ったものになる。だから、そこから自分で考えるように仕向けます。

遠山 ルールはあるんですか?

笹島 決めごとはなくて、「やるしかない」というのがうちの社訓。なにがなくてもお客さんが来たらもうやるしかない。ベジタリアンと言われてもやるしかない。いちいちつべこべ言うな、と。

遠山 笹島さんはMr.Childrenのプロデューサーの小林武史さんともお仕事をされてますね。

笹島 僕はミスチルのファンでよくライブに行ってるんです。震災の年の5月に、たまたまライブの打ち上げで小林さんがうちの店に来てくれて。そのとき、「ライブに行きました」と挨拶したら、「復興支援でやりたいことがあるから、よかったら一緒にやりませんか」とその日の夜に電話がかかってきて、次の日にまた会いに来てくださったんです。小林さんが「この2011年のうちに代々木にお店をオープンしたい」と言うので、インテリアデザイナーの片山正通さんらの尽力もあり、なんとかみんなで新商業施設「代々木VILLAGE by kurkku」を2011年11月にオープンすることができました。小林さんもおしゃべりで、僕とはよく似ていて、フィーリングが合うんです。本人には「似てね―よ」と言われましたが(笑)。

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2013.12.21(土)