夏休みの読書感想文もまだ提出してないです

――ところで、学生時代は小説とかよく読まれていたんですか? 永見さんの言葉のセンスの源が気になります。

 いや、学生時代はゲームしかやってないですね。ポケモンとかスマブラとか。本はほんまに読めなくて。親から定期的に読みなさいって言われても読まなくて、夏休みの読書感想文もまだ提出してないです。国語力はなかったですね。

 中学、高校まではずっとゲームをやってて、高校からは音楽も聴くようになりました。

――永見さんのお好きなアーティストといえばThe pillowsのイメージですが、当時から聴いていたんですか?

 The pillowsは大学から好きになりました。高校のときはBEAT CRUSADERSっていうバンドを見た目から好きになって。「なんかお面被った人がおるな」って。

 その当時、日本語の歌の聴き方がわからなくて。むずがゆかったんですよね。ひねくれてたんやと思うんですけど、「いやぁ、そんな純粋には受け止めへんよ」みたいな。でもなんか聴きたいって思ったときに、BEAT CRUSADERSは歌詞が英語だったので。そこからアジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)も好きになりましたね。

――日本語だと、歌詞の意味がストレートに入ってくるからこそ「そんなメッセージには安易に従わないぜ!」みたいな反発が生まれたのでしょうか。

 それはあると思います。なんでやろ?

 通っていた小学校が合唱に力を入れている学校だったので、いろんな合唱曲を歌っていたんですが、歌詞の意味とか考えずに歌ってたんですよね。「腹から声出す」「口を動かす」みたいな、体のことしか考えてなかったというか。それで歌詞が入ってこないようになったんですかね。

 なにかのタイミングで(歌詞が入ってきたときに)「すごいきれいなこと歌ってるやん、恥ずかしいな」って思って。「僕こんなん思ってるって思われちゃうやん」「『勇気を翼にこめて』とか、そんなん思ってないしなぁ」って。

 「ほんまにそれ思ってんの?」「そんなにみんなの味方でいてくれるの? ほんまに?」みたいな、ちょっとうがった見方をしてしまって。それで歌詞が入ってくるのが嫌って思っちゃったんです。

――先ほどの「よい『一言』とは?」のお話ともどこかつながる気がします。言葉の“作り物”感に敏感というか。

 そうかもしれないですね。そういえば、小学校のときに友達とケンカして、「お前って誰ですか?」みたいなことを言われたときに、めちゃくちゃムカついて。それって心のない言葉じゃないですか。「お前誰?」って本当に聞いてるわけじゃなくて、ただ攻撃の言葉でしかないというか。それに異常にムカついてましたね。「なんでこんな意味のないことを言うの?」って。

――永見さんの言葉にまつわる話、掘れば掘るほど興味深いです。ところで、そんな永見さんから見て、「この人の言葉のセンスやチョイス、いいなぁ」と思う人はいますか?

 ロングコートダディの堂前(透)さん。全員が知ってる言葉で、さらっと面白い言葉を使うので。

 あとはヒューマン中村さん。一言で「おー面白い!」ってなる感覚。ヒューマンさんは芸人になる前から知っていたので、そのときの衝撃もあります。

 ダブルヒガシの大東(翔生)も、言葉を自分で作ったりしてる感じ、その遊び心がええなあって思います。

2023.06.23(金)
文=ライフスタイル出版部
撮影=榎本麻美