以前、2017年夏号の『CREA Traveller』でもご紹介したブルネロ クチネリの本拠地、ソロメオ村でワインが誕生。まるで彼らのつくるカシミアアイテムのように滑らかで深みのある味わいは、クチネリ氏のこだわりと哲学の結実だ。過日ミラノで行われたお披露目ディナー会にも、意義や想いが込められて……。
ブランドの成功からソロメオ村の修復、そしてワイン造りへ
「ブルネロ クチネリ」は、イタリア・ウンブリア州の小さな村、ソロメオで生まれた高級カシミアで知られるブランドだ。カラーカシミアからスタートしたが、現在ではトータルファッションブランドへと成長し、“スポーツ・シック ラグジュアリー”という独特の世界観で、世界中の人を魅了している。
そんな「ブルネロ クチネリ」が、オリーブオイルに続いてワインの製造を始めたという。そしてその名も「カステッロ・ディ・ソロメオ(ソロメオの城)」。
実は「ブルネロ クチネリ」社は倫理的企業としても定評がある。1985年にソロメオ村にある古城を購入、修復して本社とし、当時は荒廃していた村全体の修復活動を進めてきた。中心部にシアターや図書館など、一般の人々も利用できる文化施設を作ったり、職人養成学校を運営し、ニット高度技術、仕立て、ガーデニングなどの職人技を若者たちに継承する活動をしている。
さらに、2018年には産業の園、育成の園、農業の園という3つの公園が完成、農園や一般の人も使用できる運動場等も誕生した。その活動の一環として作られた5ヘクタールのブドウ畑から生まれたのがこのワインなのだ。
科学技術と人の知恵、手を介して育てられた芳醇な味と香り
カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローの高品質なブレンドによるどっしりかつふくよかな味わいの極上ワイン「カステッロ・ディ・ソロメオ」。原料となる2万本以上のブドウの木は、起伏のある土地に通気性を保ちつつ最大量の光を受けるよう波型に配列され、丹念に人の手を加えて育てられている。長年培った知恵、科学技術、そして人間が持つ感受性、自然の摂理に従った農業哲学が活かされた賜物だ。
ブルネロ・クチネリ氏は「古代ギリシャにおいてそうであったように、私たちのワインが人間らしい儀式を復活する人々の饗宴を楽しいものにしてくれると想像するのが嬉しい」と語る。
特別な場所でお披露目ディナー会開催! その意味とは?
そしてこの「カステッロ・ディ・ソロメオ」のお披露目は、ミラノの"Instituto dei Ciechi"=視覚障碍者施設として使われている、歴史ある荘厳な建物にて行われた。クチネリ氏は特別でスピリチュアルな場所としてこの会場をセレクト。視覚のない世界さえも満たすワインの魅力ともリンクしている。
ギリシャ神話のワインと豊穣の神・ディオニソスの像に見守られるソロメオ村のワイナリー、そしてそこから生まれる万物の母なる大地に捧げるワイン。日本での販売は現状では未定だが、上陸した暁にはぜひ味わってみたいものだ。
ブルネロ クチネリ ジャパン
電話番号 03-5276-8300
2022.12.26(月)
Text=Miki Tanaka
Edit=Mami Sekiya