承認欲求に踊らされたインフルエンサーが辿る“地獄の成り上がり劇”の末路とは?

◆『ノット・オーケー!』(2022年)

 最後に紹介するのは、現代アメリカが陥っている社会問題を、毒気とユーモアたっぷりに描いたブラックコメディ映画『ノット・オーケー!』。

 本作の魅力は、主演を務めたゾーイ・ドゥイッチの肩肘を張らない見事な演技によるところも大きいでしょう。主人公・ダニーの、軽薄だけど憎みきれない根の善人さを完璧に演じきっています。

 この物語は、承認欲求に突き動かされた主人公の女性・ダニーが、SNSに“パリに研修旅行中”という嘘の画像を投稿したことで動き出します。好反応を得るなかで、彼女の自尊心は肥大し続け、“偶然同時期にパリで起きた爆破テロ事件の被害者を装う”という一線を超えた行動に至ってしまい……。

 イケイケの雑誌出版社に勤める主人公は、会社に集まるインフルエンサーや、おしゃれで強いアイデンティティー持つLGBTといった人たちと接するうちに、彼らが実際にどんな人なのかに目を向ける前に、彼らの持つ“社会的な姿”にだけ憧れを抱くようになります。“空っぽの入れ物”だけに憧れたダニーが虚構を積み重ねた末に陥る地獄は、ポップに演出されていますが強烈に心にくるものがあります。

あらすじ

雑誌出版社に勤めるダニーは、華々しいインフルエンサーたちに強い憧れを抱いていた。ある日、彼女は“パリでおしゃれな研修旅行中”という自分を演出するために、画像加工をしてSNSに写真を投稿してしまう。そんな最中、パリで爆破テロ事件が発生。ダニーはつい“事件の被害者のフリ”をしてしまったことで、嘘が嘘を生む道を歩むことになっていく。

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2022.12.08(木)
文=TND幽介〈A4studio〉