作り手たちを惹きつける京都の魅力とは何なのか。
お茶や着物など暮らしに息づく伝統文化や四季を感じる環境などから生まれる、京都ならではの創作のシーンを見つめていく。
今注目の作り手を5回に渡りご紹介。
日本の豊かな自然を思わせる“あわいの色使い”
◆「履物 関づか」
関塚真司(せきづかしんじ)
「京都は、小さな商いを応援してくれる町だと感じています」
履物職人の関塚真司さんが工房を構えるのは、京都市内の近郊住宅地・岩倉。木材倉庫をリノベーションした空間に、店舗兼工房とギャラリーを併設している。
京都駅からタクシーで30分強の距離だが、少し足を延ばしても訪れるべきスポットとして今、注目を集めている。
革靴メーカーに勤務時代、たまたま百貨店の催事で草履に出合った。台と花緒以外の装飾はなく、形はほぼ同じなのに全部違って見える。
その圧倒的な美しさに心を撃ち抜かれたが、スニーカーブームから靴の世界に入っていた関塚さんは、いかんせん着物に興味がなく、購入には至らなかったという。
「でもその後、祇園の老舗履物店から誘われて、京都に来ることに」
営業の腕を買われたのだと思い込んでいたが、用意されていたのは職人の席。それから39歳までの10年、職人から番頭まで勤め上げて独立を果たしたのが2020年の春。
コロナ禍まっただ中の船出。特段こだわりはなかったが、その場所も、やっぱり京都だった。
草履は今も昔も分業制の職人技で構成されている。
関塚さんが手がけるのは、ユーザーの注文や好みを受け、塩梅よく花緒をすげて「最大限、その人の足に合わせた履物を作ること」
花緒には新素材も用い、モダンなのにやさしい色合わせに。和装・洋装に拘泥せず、日本の豊かな自然を思わせる“あわいの色使い”で、世界観を作り出す。
【Shopping Info】
履物 関づか
所在地 京都市左京区岩倉花園町642-19
営業時間 13:00~18:00
定休日 水曜
https://hakimonosekizuka.com/
関塚真司(せきづかしんじ)
1982年新潟県生まれ。履物職人。フランスの革靴メーカーで販売員に従事した後、京都・祇園の老舗履物店にて履物製作の修業を積む。2020年春、岩倉に「履物関づか」と「岩倉AA」をオープン。
Feature
京都に魅せられ
創造の翼を広げる作り手たち
Text=Maki Takahashi
Photographs=Masuhiro Machida