作り手たちを惹きつける京都の魅力とは何なのか。
お茶や着物など暮らしに息づく伝統文化や四季を感じる環境などから生まれる、京都ならではの創作のシーンを見つめていく。
今注目の作り手を5回に渡りご紹介。
「飾って愛でる」竹工芸の美しさ
◆「京竹籠 花こころ」
小倉智恵美(おぐらちえみ)
1本の竹を半分、それをまた半分、さらに半分と竹割り包丁で細く割り、表面の皮だけを薄く剥(へ)いで巾(はば)と厚みが均一な竹ひごに。
竹ひごは、一番細いものでなんと0.5ミリまで。重ねて編んで、差し通す作業を繰り返すうち、小倉智恵美さんの手の中に、レースのように精緻な菊や牡丹の花模様が生まれる。
プラスチックが普及する以前は、竹籠は日本の生活の道具。そのなかで「飾って愛でる」高い美術性をもつ京都の竹工芸が独自の発展を遂げた背景には、茶道の影響があった。
神奈川県に生まれ育った小倉さんは、子どものころにテレビで見た茶道の世界に憧れて京都の工芸の専門学校へ。
「同じくらいエコロジーにも興味があったので、竹工芸を専攻しました」
卒業後は師匠につかず、仲間とアトリエを構えた。専門店を介して少しずつ仕事が増えていくなか、展覧会をやらないかと声がかかる。
「でも、無名の職人の作品ですので、まったく売れません。これまではお店のネームバリューで買っていただいていたのだと痛感したんです」
時はリーマンショック前後。モノが売れない時代の始まりでもあった。
「今、求められているものを作りながら、この技術を後世に残していくということが大切なのだと気づきました」
そんな経験を経て小倉さんが取り組み始めたのはアクセサリー作り。
伝統的な編みの模様や、籠の装飾に使われてきたかがり細工といった美術工芸の美しさをミニマルに再編し、茶道に縁遠い私たちにも、その魅力を伝えてくれるのだ。
【Shopping Info】
展示会で購入可能。2022年8月5日(金)~23日(火)の期間、京都市内の「ソフォラ」にて3人展を開催予定。詳細は、Instagramで確認を。
Instagram @basketry_hanakokoro
小倉智恵美(おぐらちえみ)
1982年神奈川県生まれ。京都伝統工芸専門学校竹工芸専攻卒業後、若手職人たちと共同アトリエを借りて制作を行う。2011年に独立し、工房「京竹籠 花こころ」を立ち上げる。2014年にバングルを発表。
Feature
京都に魅せられ
創造の翼を広げる作り手たち
Text=Maki Takahashi
Photographs=Atsushi Hashimoto