中村倫也インタビュー【前篇】「どんな結果でも“心中”できる仲間と」ミミックオクトパス俳優の創作論

CULTURE

2022.5.20

自分のエゴを貫くには人のエゴも聞き入れなきゃ

――後者の「自意識」に絡んでくるかもしれませんが、役者業における「納得」に関してもお話を伺わせてください。劇中、王子は「納得できないものを世に出したらおしまいなんだよ」と言いますが、役者においては最終ジャッジが自身にないことも往々にしてありますよね。時として、ご自身と監督・演出といった責任者のジャッジがズレることもあるかと思いますが、どのようにそういった局面を乗り越えているのでしょう。

　色々すったもんだをやったりもしましたが、いまとなっては監督がOKと言えばOK！と思っています。だけど、自分の持っている手触りや空間の密度、掛け合いの濃さといった色々な面から「こっちの方がいいんじゃないかな」と確信しているときはありますよ、やっぱり。「悔しいな」という想いも残しつつ……。

　ただ、それを撮って編集してつなげて作品にしていくのは監督の仕事ですし、その部分はある程度ゆだねますね。ゆだねる心がないと納得の区切りがつかないというか、納得に至らなくても区切りが必要なんです。「納得できる」の一歩手前であっても、「自分の中ではOK」という区切りを超えたら四捨五入して「納得」になるし、あとは「仕上げた作品で納得させて」という期待があったり(笑)、そんな感じでやっています。

――なるほど……。自分の中の「完璧な正解」に固執してしまうと、つらくなってしまう部分もありますもんね。

　あと、いってしまえば「納得」って独りよがりな発想でもあるじゃないですか。数年前だったら「これ絶対こっちじゃん」って思ったらそのにおいを現場でものすごく出して「伝えよう、伝えよう」と努力していたんですが、「いやそれお前ひとりの発想だぞ。決めるのはお前じゃねぇし」と気づいたこともあって。

　やっぱり人とやる作業なので、自分のエゴを貫くには人のエゴも聞き入れなきゃと思ったんです。そうやって考えていくと、色々な現場はありますが結局どうなろうと心中できる心持で臨める。そういった仲間意識を持てるかどうかが自分の中では大切で、「思ったより跳ねなかったな」と思っても、それがこのチームのこの瞬間に出したものだから、それは自分の責任でもあるというつもりで現場にいます。

(【続きを読む】中村倫也が語る「悔しさ」、自意識、創作と犠牲のバランス)

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中村倫也(なかむら・ともや)

1986年12月24日生まれ。東京都出身。2005年俳優デビュー。2014年、初主演舞台「ヒストリーボーイズ」で第22回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞。近年の出演作は映画『ファーストラヴ』、『ウェディング・ハイ』など。

『ハケンアニメ！』

2022年5月20日(金)全国ロードショー

出演：吉岡里帆　中村倫也　工藤阿須加　小野花梨　高野麻里佳　六角精児　柄本佑　尾野真千子
原作:辻村深月「ハケンアニメ！」(マガジンハウス刊)
監督：吉野耕平
脚本：政池洋佑
音楽：池頼広
主題歌：ジェニーハイ「エクレール」(unBORDE/WARNER MUSIC JAPAN)
制作プロダクション：東映東京撮影所
配給：東映
©2022 映画「ハケンアニメ！」製作委員会
https://haken-anime.jp/

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