復元が生む新たな価値観

 失われた技術、つまり“手わざ”を取り戻すために始まったのがこの事業である。対象は絵画、木彫、石彫、漆芸、染織、陶芸、金工、三線の8分野に及ぶ。

 「まずは、原資料の調査。写真しか残っていないものや寸法表しかないものも多くあり、類似品を各地の美術館で捜し、そこから類推して形状を割り出したことも幾度かありました。

 製作にあたっては、作家や職人など技術を保有している方と研究者との協同作業になるのですが、作家の方にとっては、個性を消すという、普段の活動とは逆のことを行うわけですから、なかなか大変な事業でした」

 原資料が実在していても、どうやって作られたのか、その技法が分からない作品もあった。たとえば、16世紀頃に製作された黄金の簪。

 原資料はわずか0.4ミリの銅板に彫金が施されている。この薄さの銅板に彫金をすることが、現在の技法では極めて困難だった。この黄金の簪をはじめ、大変な労苦を重ねて復元された工芸品は65件に及ぶ。

 「復帰して50年ですが、今の沖縄はこの50年でできたわけではなく、根底には琉球の文化があります。

 琉球王国時代より続いている文化も、まだたくさんあります。琉球という土台のうえに沖縄が存在していることを、展覧会を通じて多くの方々に知っていただければ」

 自身も沖縄出身の伊禮さんの言葉は、どこまでも熱い。

Text=Masao Sakurai
Photographs=Takashi Shimizu
Edit=Shojiro Yano