戦争で灰燼に帰した文化財を、並々ならぬ労苦をかけて復元

 華麗なる「尚家宝物」もさることながら、今回の展覧会の大きな特徴のひとつが、「未来へ」と名付けられた5章。会場に並ぶのは模造復元品の数々だ。

 模造復元品とは、可能な限り原資料にあたり、調査・研究を重ね、製作当時と同じ材料、同じ技法をできる限り用い、製作当時の姿を忠実に復元すること。

 単に形を真似て作られたレプリカとは一線を画す。この復元事業は、琉球王国時代の文化遺産の再興を目的とし、平成27年度から沖縄県立博物館・美術館が中心となって進められてきた。

 なぜ復元なのか。復元事業に携わってきた、沖縄県立博物館・美術館の伊禮拓郎さんに尋ねた。

 「太平洋戦争で激しい地上戦が繰り広げられた沖縄は、人や物、琉球のシンボルともいうべき首里城をはじめ、多くの美術品や工芸品、そしてそれらを作る技術までもが失われてしまいました。

 また、明治以降の近代化がもたらした生活様式の激変も、物作りの技術が消滅する大きな原因となったのです」

Text=Masao Sakurai
Photographs=Takashi Shimizu
Edit=Shojiro Yano