戦争で灰燼に帰した文化財を、並々ならぬ労苦をかけて復元

琉球王国が、中国をはじめとする最先端の海外文化が数多くもたらされた海洋国家であったことを物語る逸品も多数展示される。●三彩鴨形水注(さんさいかもがたすいちゅう) 中国 明時代・16世紀。
華麗なる「尚家宝物」もさることながら、今回の展覧会の大きな特徴のひとつが、「未来へ」と名付けられた5章。会場に並ぶのは模造復元品の数々だ。
模造復元品とは、可能な限り原資料にあたり、調査・研究を重ね、製作当時と同じ材料、同じ技法をできる限り用い、製作当時の姿を忠実に復元すること。

●模造復元 美御前御揃(御玉貫)(ぬーめ-うすりー うたまぬち) 上原俊展(金細工まつ)、高田明(美術院) 平成30年度 沖縄県立博物館・美術館蔵 展示期間:5月3日(火)~29日(日)。
単に形を真似て作られたレプリカとは一線を画す。この復元事業は、琉球王国時代の文化遺産の再興を目的とし、平成27年度から沖縄県立博物館・美術館が中心となって進められてきた。
なぜ復元なのか。復元事業に携わってきた、沖縄県立博物館・美術館の伊禮拓郎さんに尋ねた。

琉球と京都、王朝文化が息づく土地の繫がりをしのばせる名品。●朱漆雲龍箔絵天目台(しゅうるしうんりゅうはくえてんもくだい) 第二尚氏時代・16~17世紀 京都・孤篷庵蔵 ※東京会場のみ。
「太平洋戦争で激しい地上戦が繰り広げられた沖縄は、人や物、琉球のシンボルともいうべき首里城をはじめ、多くの美術品や工芸品、そしてそれらを作る技術までもが失われてしまいました。
また、明治以降の近代化がもたらした生活様式の激変も、物作りの技術が消滅する大きな原因となったのです」

壺屋で焼かれた上流階級層向けのうつわ。●沖縄県指定文化財 三彩面取網代文抱瓶(さんさいめんとりあじろもんだちびん) 壺屋 第二尚氏時代・19世紀 沖縄県立博物館・美術館蔵。
Text=Masao Sakurai
Photographs=Takashi Shimizu
Edit=Shojiro Yano