好奇心の衝動にまかせ まずは行動する!
松下さんの表現の入り口は絵を描くことだった。画家の母の影響で高校は美術科に進学し、美術の道に進む予定だったが、18歳のときに『天使にラブ・ソングを2』を観て衝撃を受け、こんなふうに歌えたらどんなに楽しいだろうと、美術から音楽へ大きく舵を切る。
「やってみたい! 楽しそう! と思ったらまず、行動する。考えるのはそのあと(笑)。子どものころから好奇心旺盛で、一つのことにこだわらずに面白いと思ったことはとりあえずやってみるタイプでした」
音楽の専門学校を卒業後、21歳で「洸平」名義でペインティング・シンガーソングライターとしてデビュー。なかなか結果を出せず悶々としているときにミュージカルの舞台に誘われ、その出演を機に舞台の魅力に目覚めた。その後、栗山民也ら名演出家と出会い、2019年には「スリル・ミー」「母と暮せば」で読売演劇大賞優秀男優賞と杉村春子賞などを受賞。同年、「スカーレット」のヒロインの相手役に抜擢された。
松下さんは、音楽を志すと決めたときには武道館のステージに立つ姿を、俳優をやろうと決意したときには朝ドラや月9ドラマに出演するビジョンが頭に思い浮かんだのだそうだ。
「こうなりたいという自分がある、というのは恵まれているなと思います。その夢が叶うかどうかは別として、無計画に夢を見ることができる性格でよかったなと(笑)」
松下さんは決して飾らない。壮大な夢についても、「そんなことを口にしたら笑われてしまうんじゃないか」なんて意識は1ミリももたなかったそうだ。驚くほど素直、眩しいくらいに無邪気。
大きな目標を掲げた自分を裏切りたくない
「僕はなんでも大それたことを言ってしまうんです。言うのはタダですからね(笑)。でも、そういうことを平気で言える自分に、ときどき助けられます。もちろん、その夢を叶えるためには10年20年かかることも分かっています。掲げた目標が大きいと、その後どれだけ挫折しようとも、言った当時の自分を裏切りたくないという思いが生まれて、途中で放り投げることができなくなるんです」
心が折れそうになることも、ひとり部屋でポロポロと涙がこぼれ落ちることもあった。
「悔しくて泣いているのですから、そのぶん逃げなかった証拠ですよね。大きな目標を掲げると、その瞬間、心にポッと炎が灯るような気がします。その炎を消さないように懸命に進んでいけば、絶対に叶うとは言えませんが、叶えるための努力はできると思う」
松下洸平(まつした・こうへい)
1987年3月6日生まれ、東京都出身。2008年にシンガーソングライターとしてデビューし、翌年、俳優活動を開始。主な出演作にNHK連続テレビ小説「スカーレット」、「最愛」など。3月14日に最新曲「KISS」が配信リリース。フジテレビ4月期木曜劇場「やんごとなき一族」に出演。
舞台「cube 25th presents 音楽劇『夜来香ラプソディ』」
太平洋戦争末期。作曲家の服部良一は、日本軍から召集を受け、上海に渡る。作曲家の黎錦光や李香蘭と出会い、人種や思想を超えたコンサートを開催しようと奮闘。
出演:松下洸平、白洲迅、木下晴香ほか
公演日:2022年3月12~27日
場所:東京・Bunkamuraシアターコクーン※名古屋、大阪、新潟(長岡)公演あり
2022.03.13(日)
Text=Tomoko Kurose
Photographs=Erina Fujiwara
Styling=Tatsuhiko Marumoto(UNFORM)
Hair & Make-up=KUBOKI(Three PEACE)