島の暮らしのなかで大切に受け継がれてきた伝統の味わい。
時代が移るとともに食文化が大きく変化した今だからこそ包丁人(ほーちゅー)たちが丁寧に作る一皿の美味しさは、いっそう魅力的なのだ。
沖縄へ行ったら一度は訪れたい、注目のレストランを5軒ご紹介。
沖縄で育まれた薬草料理で“ぬちぐすい”の意味を知る
●Café がらまんじゃく
野草や薬草がふんだんの薬膳料理で医食同源を体現する「Caféがらまんじゃく」。
琉球古民家のお店を覆うように、敷地内には野草や薬草が生い茂っている。それらは店主・山城清子さんが自ら植え育てたものだ。
「食は命を支えるもの。だからこそ食材からこだわりたい」
母が食堂を営んでいたため、幼少の頃より料理に触れる機会が多かったという山城さん。2009年に「がらまんじゃく」をオープンした当初は薬膳とは無関係だったという。
だが、沖縄の特に若者の食生活の乱れや、古来食されてきた独自の食材が消失するのではと不安を覚え、野草や薬草の利用法や効能について独学で研究を進めた。
薬草のあまりの多さに驚きながらも、琉球王国時代の古い書物などを紐解き、薬草の知識を吸収。開店から半年後には薬膳料理店へとシフトした。
献立は“がらまん定食”など、膳や定食が5種。すべて化学調味料を使用せず、余分なものは一切無添加。味付けは粟国島(あぐにじま)の天然塩と3年発酵味噌、醤油、黒糖のみと自然のものにこだわる。
運ばれてきた料理を目にすると、素朴ながらも華やかな印象。思い描く薬草の料理とは一線を画している。
「薬草をいかに美味しく食べてもらえるか、もう一度食べたいと思ってもらえるか。そのため、味付けも見た目も工夫しました」
薬草で染められたごはん、四季折々の野草などを50種類近く使用した和え物や汁物と、多彩な料理に心が弾む。唯一無二の“命薬”(ぬちぐすい)をいただきたい。
山城清子(やましろ きよこ)さん
那覇市出身。那覇市内で喫茶店を経営した後、2009年金武町で「Café がらまんじゃく」をオープン。ライフワークである薬草の知識は豊富。薬草のことを語りだすと止まらなくなる、個性的なキャラクターで慕われている。
Café がらまんじゃく
所在地 沖縄県国頭郡金武町金武10507-4
電話番号 098-968-8846
営業時間 12:00~15:00
定休日 月~金曜 ※完全予約制
交通 那覇空港から車で約60分
http://garamanjaku.okinawa/
Feature
希少な技を受け継ぐ
沖縄の“包丁人”たち
取材・文=伊藤一洋
写真=大湾朝太郎
構成=矢野詔次郎