島の暮らしのなかで大切に受け継がれてきた伝統の味わい。

 時代が移るとともに食文化が大きく変化した今だからこそ包丁人(ほーちゅー)たちが丁寧に作る一皿の美味しさは、いっそう魅力的なのだ。

 沖縄へ行ったら一度は訪れたい、注目のレストランを5軒ご紹介。


沖縄で育まれた薬草料理で“ぬちぐすい”の意味を知る

●Café がらまんじゃく

「がらまんじゃく」の集大成ともいえる“黄金膳(くがにぜん)” 5,500円。スベリヒユ、雲南百薬、黄金芋などの身体にいい食材がたっぷりと詰まっている。「デトックス効果が期待できる、いわば食べるエステです」と山城さん。

 野草や薬草がふんだんの薬膳料理で医食同源を体現する「Caféがらまんじゃく」。

森の中に迷い込んだかのような店内。

 琉球古民家のお店を覆うように、敷地内には野草や薬草が生い茂っている。それらは店主・山城清子さんが自ら植え育てたものだ。

山城清子さん。
「ジュースを作ろうね~」と庭の草木から新芽や葉を摘み取る山城さん。

「食は命を支えるもの。だからこそ食材からこだわりたい」

 母が食堂を営んでいたため、幼少の頃より料理に触れる機会が多かったという山城さん。2009年に「がらまんじゃく」をオープンした当初は薬膳とは無関係だったという。

1832年、王府に献上された「御膳本草」。沖縄食材について細かく記載され、山城さんは今も熟読する。

 だが、沖縄の特に若者の食生活の乱れや、古来食されてきた独自の食材が消失するのではと不安を覚え、野草や薬草の利用法や効能について独学で研究を進めた。

自家栽培の薬草のほか、志を同じくする生産者さんの野菜もたっぷりと使用する。

 薬草のあまりの多さに驚きながらも、琉球王国時代の古い書物などを紐解き、薬草の知識を吸収。開店から半年後には薬膳料理店へとシフトした。

10種類以上の具材が入っている“薬草スープ”。甘みとコクがあり食べやすい。

 献立は“がらまん定食”など、膳や定食が5種。すべて化学調味料を使用せず、余分なものは一切無添加。味付けは粟国島(あぐにじま)の天然塩と3年発酵味噌、醤油、黒糖のみと自然のものにこだわる。

長命草やノニ、ニガナなど庭に生えている植物をそのまま搾った“野草ジュース”。薬草の滋味が身体に染みわたる。

 運ばれてきた料理を目にすると、素朴ながらも華やかな印象。思い描く薬草の料理とは一線を画している。

「薬草をいかに美味しく食べてもらえるか、もう一度食べたいと思ってもらえるか。そのため、味付けも見た目も工夫しました」

この看板が目印。

 薬草で染められたごはん、四季折々の野草などを50種類近く使用した和え物や汁物と、多彩な料理に心が弾む。唯一無二の“命薬”(ぬちぐすい)をいただきたい。

山城清子(やましろ きよこ)さん

那覇市出身。那覇市内で喫茶店を経営した後、2009年金武町で「Café がらまんじゃく」をオープン。ライフワークである薬草の知識は豊富。薬草のことを語りだすと止まらなくなる、個性的なキャラクターで慕われている。

Café がらまんじゃく

所在地 沖縄県国頭郡金武町金武10507-4
電話番号 098-968-8846
営業時間 12:00~15:00
定休日 月~金曜 ※完全予約制
交通 那覇空港から車で約60分
http://garamanjaku.okinawa/

Feature

希少な技を受け継ぐ
沖縄の“包丁人”たち

取材・文=伊藤一洋
写真=大湾朝太郎
構成=矢野詔次郎

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