島の暮らしのなかで大切に受け継がれてきた伝統の味わい。

 時代が移るとともに食文化が大きく変化した今だからこそ包丁人(ほーちゅー)たちが丁寧に作る一皿の美味しさは、いっそう魅力的なのだ。

 沖縄へ行ったら一度は訪れたい、注目のレストランを5軒ご紹介。


40年続く至高の王朝料理 海蛇パワーで健康長寿

●イラブー料理 カナ

沖縄風炊き込みご飯“ジューシー”などが付く“イラブー汁定食” 3,636円。

 琉球宮廷料理の流れを汲む“イラブー汁”を約40年にわたり提供している「カナ」。

 イラブーとはエラブウミヘビのことで、医食同源の考えが古くから根付く沖縄では、“クスイムン(=薬)”として病中病後などに食べられてきた由緒ある食材だ。

左から、娘婿アレックスさん、我謝藤子さん、泉さん。

 店主の我謝藤子さんとイラブー汁の出会いは開店間もない1981年。友人の送別会のために、イラブー汁作りに関わったことがきっかけだ。

神の島と崇められる久高島産イラブーの燻製を使用する。

 この時、滋養食としての効能に興味を持ち「病気で困っている人を助けられれば」とお店での提供に踏み切った。

 仕込みから完成まで3日を要する手間がかかる料理。特に煮込む作業は、夜を徹して10時間以上。

別鍋で煮込んだ“テビチ(豚足)”などをイラブーとあわせて完成。

 その間、ひたすらアク抜きをしなければならず、鍋から離れられない。厨房に新聞紙を敷き、仮眠を取ることもあったという。

 その大変さから、高齢になった藤子さんを手伝うため、娘の泉さん夫婦が6年前にアメリカから帰国。

アットホームな雰囲気の店内。

 藤子さんからイラブー汁作りの神髄を叩き込まれた泉さんは「この味を継ぐことは私にはまだまだ……」と謙遜するが、藤子さんは「もう大丈夫さぁ~」と背中を押す。

 母から娘へと継承される究極の一杯、ぜひ味わってみたい。

一度は訪れてみたいお店。

我謝藤子(がじゃ ふじこ)さん

1934年本部町生まれ。'81年ご主人の故・孟諄さんと那覇で「カナ」を開店。2000年、現在地に移転した。丁寧な調理が評判を呼び、県内外にファン多し。

イラブー料理 カナ

所在地 沖縄県中頭郡北中城村屋宜原515-5
電話番号 098-930-3792
営業時間 18:00~22:00
定休日 月~木曜 ※完全予約制(2日前までに)
交通 那覇空港から車で約40分
http://irabu-kana.com/

Feature

希少な技を受け継ぐ
沖縄の“包丁人”たち

写真=G-KEN
取材・文=伊藤一洋
構成=矢野詔次郎

この記事の掲載号

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