古きも新しきも融合させる 懐の深い場所

2020年 日常的な素材を使って目に鮮やかな作品を築き上げるのが鬼頭の手法。無数のフラフープが場を彩る。「光の広間」にて。
京都が他のどこより厚い歴史の積み重なりを感じさせるのは、常に新しいものを受け入れてきたからだ。新奇なものは徐々に馴染んで呑み込まれ、いつしか京都の伝統へと姿を変える。
京都市京セラ美術館の広大な展示スペースは、古今が同居する京都の良さを実地に感じられる場でもある。

否応なく目を惹く奇妙な造形は、織物で形づくられた真っ赤な乳房の群生であるという。生命力の横溢を感じさせる。コレクションルーム:春期 展示風景。
「伝統」のほうを請け負うのは、リニューアルを機に設けられた常設のコレクションルーム。近代以降の京都の美術の名品に、いつでも触れることができる。展示替えのタイミングが、四季に合わせて年に4回あるというのもいい。

人の知覚や空間概念を問い続ける現代作家の造形には遊び心が溢れ出ている。コレクションルーム:春期 展示風景。
3,700点を超えるコレクションのなかでも、近代日本画の大きな流れを形づくる「京都画壇」の作品群は、質量ともに圧倒的だ。
新しいアートが観られる空間も、負けじと存在感を放つ。敷地東側に建てられた新館のワンフロアを占める「東山キューブ」は、現代アートやアニメ、ファッションなどジャンルを超えた最先端表現の拠点となる予定。
開館記念の杉本博司の個展は、真新しい室をいっそう清涼にするような展示で、今後の使われ方の指針になりそう。

北西エントランスのガラス窓から差し込む光をカラフルなものに転換し、地下「ザ・トライアングル」へ至るまでの空間全体の雰囲気を変容させている。映像プロジェクションは日没後から22時まで。
北西エントランスの地下1階には、「ザ・トライアングル」が設けられた。
小さめのスペースながら、新進のアーティストが発信をする拠点として、最も尖った表現に触れられる場となる。
鬼頭健吾スペシャル・インスタレーション
「ghost flowers」「untitled (hula-hoop)」
会期 開催中~2020年9月6日(日)
会場 「ghost flowers」:北西エントランス1F(ザ・トライアングル上部)、「untitled (hula-hoop)」:光の間
料金 無料
文=山内宏泰
撮影=橋本 篤