1935年の展示風景が 時を超えて甦る

日本画の手法で当時の風俗が、服装髪型に至るまで精細に描かれている。
北回廊1階展示室で展開されているのは、前身の大礼記念京都美術館が開館時、どんな「最初の一歩」を踏み出していたかを検証しようというユニークな特別企画。
開館して3年目の1935年春、同館では「本館所蔵品陳列」が開かれた。そこに出品された所蔵作品47点を、今回のリニューアルに際して再度集めて展示しているのである。

天然痘の予防接種を受ける女性。太田聴雨は果敢に現代風俗を描いた。

日本的なモチーフと感覚を前面に打ち出しながら洋画に取り組んだ作家の風景画。
右:菊池契月《散策》1934年
日本女性の美しさを繊細な筆遣いで描く作家の特質が余すことなく発揮された一作。
日本画の中村大三郎、洋画の岡田三郎助、京都陶芸界の重鎮(五代)清水六兵衞……。会場を観て回れば、当時最先端・最高峰の表現がここに一堂に集められていたのだということがよく理解できる。
鋳金工芸の巨匠が、得意とする動物のモチーフに取り組んだ名品。
右:五代清水六兵衞《大礼磁仙果文花瓶》1926年
独自の技法「大礼磁」の代表的な作例。絵柄と技術が見事に融合。

琳派の流れを汲んだ装飾性の高い画面は、恐ろしいまでの完成度を誇る。
当時の日本人の美意識までもが、身に沁みて感じられるかのような展示だ。
京都市京セラ美術館開館記念展
「京都の美術 250年の夢 最初の一歩:コレクションの原点」
会期 開催中~2020年9月6日(日)
会場 本館 北回廊1階
料金 1,000円
京都市京セラ美術館
所在地 京都市左京区岡崎円勝寺町124
電話番号 075-771-4334(10:00~18:00)
開館時間 10:00~18:00
休館日 月曜(祝日の場合は開館)
料金 コレクションルーム 730円
https://kyotocity-kyocera.museum/
※企画展・別館は、展覧会ごとに料金が異なる
※当面の間は前日までの予約制

文=山内宏泰
撮影=橋本 篤