◆弘前れんが倉庫美術館|Hirosaki Museum of Contemporary Art

 弘前藩の城下町として、津軽地方の経済や文化の発展を担ってきた青森県弘前市。

 この地で100年以上もの歴史を刻んできた煉瓦倉庫が、新たな美術館として再生を果たした。

 重厚にして温かみのある煉瓦が伝える、未来へと繋がる物語に耳を澄まして。


重厚な煉瓦造りの工場が クリエイティブ・ハブに

 弘前城の天守閣を彩る2,600本もの桜、勇壮にして華麗な夏の弘前ねぷたまつり、そして冬の積雪に耐えて実を結ぶ生産量日本一のりんご。城下町弘前の美しき誇りは枚挙にいとまがない。

 なかでも、長い冬に終わりを告げる弘前公園のさくらまつりは人々にとって大きな楽しみだが、今年は新型コロナウイルスの影響から開催中止となってしまった。

 お濠の水面を桜の花びらが埋め尽くす花筏も愛でることができず、弘前市民は無念のため息をついたことだろう。

 もう一つ、この春のお披露目がかなわなかった美しきものがある。弘前れんが倉庫美術館だ。

 明治から大正にかけて酒造工場として建設され、戦後は大々的にシードルを製造してきた「吉野町煉瓦倉庫」を約2年間かけて改修したこの美術館の建築コンセプトは、「記憶の継承」と風景の再生。

 パリを拠点としてグローバルに活躍する建築家の田根 剛が建築設計を手がけ、築100年におよぶ煉瓦倉庫の耐震性能を高め、残せるものは可能なかぎり残しながら、地域の「クリエイティブ・ハブ」として生まれ変わらせた。

Text=Yuko Harigae(Giraffe)
Photographs=Sho Shibata
Cooperation=Hirosaki Museum of Contemporary Art