◆京都市京セラ美術館|Kyoto City KYOCERA Museum of Art

 真っ赤な巨大鳥居がランドマークとなっている京都・岡崎の地にぜひ足を運びたくなる新しい名所の誕生である。

 そこは、建築と展示が一体となって一つの世界観をかたちづくる「開かれた美術館」だ。


東西を貫く軸線が 建築全体の個性を強調

 京都がいつの時代も人を虜にしてきたのは、至るところで「そこにしかない美」が味わえるゆえ。

 このたびはまた一つ、文化・芸術ゾーンとして知られる岡崎の地に、新しい美の体感装置が加わった。リニューアルオープンと相成った京都市京セラ美術館である。

「帝冠様式」建築の外観はできるかぎりそのまま残されている。

 1933年創建の堂々たる建築が、構造・外観・意匠は極力受け継ぐかたちで再整備されたのだ。

 基本設計を手がけた青木淳(そのまま館長に就任)と西澤徹夫が、リニューアルに際して大切にしたポイントは二つある。

京の美を盛る、新しき「器」の誕生。

 まず、西側エントランス前の広いスペースをそのまま残すこと。ここはスロープ状の「京セラスクエア」なる広場となった。

 もう一つは東西にあるエントランスを繋ぎ、建築の「軸線」を強調すること。場の個性がくっきり浮かび上がる効果が上がっていて秀逸だ。

外壁は重厚な煉瓦タイル。創建当初のものをできるだけ使用。

 平安神宮の大鳥居を眺めながら京セラスクエアを降りてメインエントランスをくぐると、目の前に大階段がそびえる。

 上ればそこは天井高16メートルを誇る中央ホールだ。大空間を抜けての東エントランスへ至る。

 眼前には日本庭園が広がり、気分はそのまま借景の東山まで飛び上がっていけそう。なんたる開放感か!

左:日本庭園には四季折々の豊かな植栽が施される。
右:元の玄関はそのまま残し、メインエントランスは地下に設けた。

 仮に展示というお目当てがなくとも、ただそぞろ歩いて場の空気を堪能したくなる。京都という土地の美を盛るための、見事な「器」の出現である。

東山キューブの屋上「東山キューブテラス」は自由に利用可。

文=山内宏泰
撮影=橋本 篤

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