悠久の時が刻まれた地が 思索を誘う

東山キューブのこけら落とし展示は杉本博司が担った。
平安時代から寺院が建ち並んでいたという岡崎の地に惹かれた杉本は、展示空間に仮想の寺院を建立し、「荘厳」の世界を現出させようと目論んだ。

東山キューブに面した庭園の池上に、ガラスの茶室が出現。展示は2021年1月31日(日)まで。 ©Hiroshi Sugimoto Architects: New Material Research Laboratory / Hiroshi Sugimoto + Tomoyuki Sakakida. Originally commissioned for LE STANZE DEL VETRO, Venice / Courtesy of Pentagram Stiftung & LE STANZE DEL VETRO.
試みは見事に成就したと言っていい。
ガラスでできた祈りの塔をずらり並べる「光学硝子五輪塔」に始まり、蓮華王院本堂・通称三十三間堂の千体仏の姿を精緻に写し取った「仏の海」、ニュートンに倣いプリズムを通した鮮やかな色の数々を撮影した「OPTICKS」……。

蓮華王院三十三間堂の千体仏を余さず、東山から昇る朝日のもとで撮影した。©Hiroshi Sugimoto

プリズムを通した光が描き出す純粋なる色を、写真に撮って表現した新作。大判カラーでの作品展示は世界初。©Hiroshi Sugimoto
歩を進め、次々と現れる作品と対峙するたび、心が澄み渡る。
アートは目に愉しいに留まらず、人の精神の深いところに作用するものと改めて知る。

光学ガラスで作られた五輪の塔。13基が等間隔に展示されている。©Hiroshi Sugimoto
右:《法勝寺 瓦》平安時代末
岡崎の地にかつてあった法勝寺の瓦も杉本が所蔵していたもの。©Hiroshi Sugimoto
「杉本博司 瑠璃の浄土」
会期 開催中~2020年10月4日(日)
会場 新館 東山キューブ
料金 1,500円
文=山内宏泰
撮影=橋本 篤