猫の考えてること、知りたくないですか?

 人の心を見透かしているようでもあり、まったくわかっていないようでもあり……。

 ベストセラー『ざんねんないきもの事典』シリーズの監修者としても知られる動物学者の今泉忠明さんが、猫脳の謎に迫る注目の書籍『猫脳がわかる!』から、興味深いコラムをご紹介。


人間のコソコソ会話から
明日の予定を見抜いちゃう!?

 「野生の勘がはたらく」との言葉がありますが、野性が色濃く残っている猫は、文字通り、勘がよいといえるかもしれません。

 猫の五感の鋭敏さは、人からしたら「アメージング!」の数々。五感を研ぎ澄ますことが直感力アップにつながるとは、よく言われます。

 5つの感覚を超えた、直感らしきものが「第六感」であるなら、この理論からすると猫も相当、鋭そうですよね。

 実際、よく耳にする例を検証してみましょう。

 「明日は愛猫を動物病院に連れて行こう」と夫婦でこそこそ話していたところ、翌朝になると猫がベッドの下に隠れて出てこない、といったケース。自分たちのプランを猫に見抜かれたと感じませんでしたか?

 この例は一見、猫の予知能力のように思えますが、本当のところは察知能力なんですね。猫は五感の中でも、聴覚がとくに優れていて音には敏感です。人の話し声のトーンを聞き分けるとともに、飼い主の放つ微妙な雰囲気の変化から、「様子がいつもと違う」と気付き、前日から警戒していたわけです。耳がいいことと、縄張りを常にパトロールして異変を感じ取る力の合わせ技といっていいでしょう。

 警戒心が強い猫は、察知能力に長けているのです。

猫が地震を予知したことも

 また、昔から猫には地震を予知する能力があるのではないか、という説がささやかれていました。

 その説が確信に変わったのは、1995年に起きた阪神・淡路大震災の後です。専門家が動物病院などで聞き取り調査をしたところ、約4割の猫が地震の起きる前から突然興奮状態になるなど、ふだんと違う行動をとったことが判明したのです。

 その理由としては、震源域の岩石が破壊されるときに大量に放出された電磁波に、猫が反応したのではないかということが有力視されています。地震予知のメカニズムの詳細はまだよくわかっていませんが、野性が強い猫には、何かしらの第六感が備わっていると考えられるのではないでしょうか。

 さらに、猫の持つ不思議な能力としてアメリカで話題になったのが、「人の死を予知できる猫がいる」という話です。

 アメリカの老人ホームで、セラピー目的で飼われている猫が、そばに寄り添った老人に限って、その数時間後に亡くなるというケースが続いたとか。

 猫は嗅覚にも優れていますが、この猫はとくに並外れた嗅覚を持っていたため、死期が近い人のニオイを嗅ぎ取っていたのかもしれません。

 ※本稿は『猫脳がわかる!』(文春新書)の一部を再編集したものです。

『猫脳がわかる!』

猫の心を知るには、猫の脳を知るべし! ベストセラー『ざんねんないきもの事典』シリーズ、『わけあって絶滅しました』の監修者としても知られる動物学者の今泉忠明さんが、解剖学、動物行動学の知見を駆使して、猫脳の謎に迫る。かわいい写真、イラストも満載!

著・今泉忠明
800円+税(文春新書)
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今泉忠明

哺乳動物学者。「ねこの博物館」館長。1944年東京生まれ。東京水産大学(現・東京海洋大学)卒業。国立科学博物館で哺乳類の分類学、生態学を学ぶ。文部省(現・文部科学省)の国際生物学事業計画(IBP)調査、環境庁(現・環境省)のイリオモテヤマネコの生態調査などに参加する。トウホクノウサギや二ホンカワウソの生態、行動などを調査している。上野動物園の動物解説員を経て、現在は奥多摩や富士山の自然、動物相などを調査している。『おもしろい! 進化のふしぎ ざんねんないきもの事典』(高橋書店)など著書・監修多数。