こんにちは、漫画家のつづ井と申します。現在、「裸一貫!つづ井さん」というタイトルで、日常の何気なかったり何気なくなかったりする出来事を、コミックエッセイとして「CREA WEB」さんにて連載させていただいております。
さて、先日エッセイの単行本発売に伴い、このような文章を書きました。内容としては、「こういう出来事があり自分を省みたので、今後はこうしていきます」という決意表明でほぼ自分のために書いたものでしたが、想像を超えてたくさんの方に読んでいただき、驚くほど多くのリアクションをいただきました。全てにお返事は出来ておらず心苦しいのですが、この場を借りてお礼申し上げます。本当にありがとうございます。
そしてこの内容について、言葉足らずな部分があったので「自虐をやめる」ということについて改めて書かせていただきます。前回よりもっと真面目で長くなっちゃうかも…正しい言葉選びが出来ていますように~!
先述のnoteの中で私は、「私が自分の日常生活を絵日記にし、沢山の方の目に触れるインターネットに放つ上で、『未婚で』『パートナーがおらず』『恋愛経験が極端に少ない』『女性』であることに関して自虐をするのは、もうやめようか令和」と書きました。しかし、そう決心した私が実生活においてすっぱり自虐をやめられたかというと、残念ながらすぐにそうはいきませんでした。
自発的な自虐は意識して減らしていったものの、変わらない周囲の「空気」に対して「は? おもんないが…」という毅然とした態度を次の日からいきなり取れた訳ではなく、否定も肯定もしない曖昧な笑みを浮かべるようにするくらいが、その時の私にとっての精いっぱいでした。癖として染みついてしまった自虐の所作はなかなか抜けず、「自分が自己防衛と怠慢のために自虐している」、「他人の気分を良くするために削られている」と自覚したにも関わらず、「楽しいから心配ご無用です」とはっきり返せない自分に情けなくなりました。
だからこそせめて「つづ井さん」の絵日記の中では、ハッピーなことばかりではない私の実生活をろ過して、生きてて楽しい部分だけを抽出して描いていきたいと改めて強く思いました。生身の私は、まだ「空気」に対して強固な姿勢で立ち向かうことは完璧にはできませんが、せめて商業作品として沢山の方の目に触れる絵日記の中では、「どうぞおかまいなく、楽しくやっておりますので」と言い続けていこう、「私は」自虐を絵日記のネタにしないでいこうと決めました。そして、いらんこと言うてくる人に「は? どっこい楽しいですけど 詳細はこちらをご参照ください」と差し出せるような絵日記を描きたいと思いました。
その時のことを今思い返すと、私は怒っていたのだと思います。私を勝手に評価する様々なものさしや、それらを当たり前にあてがってくる他人の存在、そして何より「そんなもんか」と迎合してしまっていた自分自身に対して、初めて怒りを自覚したのだと思います。それまで私はずっと、怒ってはいけないと考えていました。「生きるのが楽し~い」と脇目も振らず言いつづけるためには、悲しみや怒りといったマイナスな感情が自分の人生にあってはいけなくて、それらが見えないふりをして楽しいことだけに目を向けていくことが「ただただ生きるのが楽し~い」に繋がっていくのだと考えていました。私はそれが上手にできていると思っていたし、実際それで上手くいっていた時期もありました。
ですがこの件があってから、「怒り」も自分の感情のひとつで、それから無理に目をそらし続けるのは自分を大切にすることに繋がらないな、と考えるようになりました。もちろん今でも「私もみんなももっと怒るべき!」とは思いません。「私も別に怒って良かったんだな」と思います。選択肢の中に「怒る」があっても良かったんやんけ、な~んだという感じです。
そして、自分がご機嫌でいるために、生きるの楽しいと言い続けるために、適切なタイミングと然るべきやり方で気持ちを表現する術を身に付けたいと思いました。私にとって、その術のひとつが「裸一貫! つづ井さん」で徹底して楽しい日常を描くことでした。それが今の私を取り巻く様々なものさしとそれに伴う一方的な評価に対する意志表示になると考えました。実は、ここに関してはけっこう上手いこといったんじゃないかと自負しており、ウチの人生ええやん♪と自分でニコニコ読み返すことも多いです。(何重にも幸せなヤツ♪)(私♪)
そしてそのおかげか、「裸一貫!つづ井さん」の連載を始める前と比べてみると、世間の「空気」に対しての実生活における自分の振る舞いも、ずいぶん楽になってきたように感じます。先手を打って自虐していた時よりも、それを自覚しこれじゃいかんと曖昧に苦笑していた時よりも、今が一番ストレスがないです。社会の「空気」と物理的に距離を取った部分もありますが、改めて自分が何を選んできたかを肯定できるようになってきたのだと思います。自分の選択に自信がついてきた、とも言い換えられます。日常の中でスコールのようにいきなり「空気」を浴びせられる場面があっても、スンとしていられるようになってきました。いきなり変わることは難しいだろうけど、いつの間にか自虐が癖になってしまっていたように、違うな~と思ったことに「違います」と言葉と態度で示すように意識していれば、これもいつの間にか習慣になっていくんじゃないかな、そうなればいいな~と考えています。
最後に、私がこういった言葉を発信できたこと、且つそれに共感してくださる方が沢山いてくださることは、長い間ずっと窮屈さと戦ってきた沢山の方々のおかげだと心から思います。かちかちに固まった大地を、大変な思いをしながら丁寧に耕して「土壌」を作ってきて下さった方々がいたから、今私が素直に自由に「楽しいな~」と発言できるのだと思います。
そして私が変わらず「生きるのが楽し~い」と絵日記を描き続けることで、その「土壌づくり」の本当に端っこの方のお手伝いがもし出来るとしたら、こんなに嬉しいことはありません。性別や年齢や、その他もろもろの「属性」でしかないものによって理不尽な思いをする人が少なくなっていきますように。
世間は日々変化し続けていて、数年後、数十年後の私が自分のnoteやこの文章を読み返した時、「こんなことで悩んだ時期もあったね、今じゃ考えられんね」と言えますように。
その時代を生きる人たちが、「ウチらの時代じゃありえんね」と笑い飛ばすものでありますように。
ここまで読んでくださりありがとうございました!
つづ井
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