港町・神戸で生まれ育ち、物心ついた頃から「フロインドリーブ」のパンに親しんできたからか、私は、ライ麦が入ったドイツパンが大好き。各地のドイツパンのお店を訪ねるのも楽しみのひとつです。

 北野のフレンチレストラン「ラ・ターチ」へ食事に行った時、出てきたクミン入りのパンが神戸ではなく奈良のお店から送ってもらったもので、作っているのがドイツパンのお店だと聞いて、さっそく出かけました。

 近鉄奈良線の学園前駅からバスに乗って10分余り。「朝日町一丁目」で下車すると閑静な住宅街。

 バス停すぐに、そのお店「Erdal(エアダール)」はありました。

 ガラス越しに見える店内には、パンがぎっしり並んでいます。

 木のドアを開けて中に入ると、香ばしいパンの香り。奥の厨房でパンが焼かれています。

 対面販売で、パンの説明もとてもていねい。見たことのないパンもあり、あれこれ迷いながらパンを選ぶ客はとても楽し気。

 5人も入ればいっぱいの小さなパン屋さんは、ドイツの田舎の村にありそうな雰囲気です。

 オープンは、2013年11月4日。ご主人・丸瀬峰晴さんは、1984年生まれ。

 「高校時代にアルバイトしたのがパン屋で、ハード系やブレッツェルもあったし、サーモンを挟んだサンドイッチもおいしくて」そのまま就職し、パンを作るようになったと言います。

 5年働いて「本場のパンを食べてみたい」と、ドイツへ渡りました。

「日本で思っていたほど、本場ドイツのパンは酸っぱくないんです。色々な街へ行ってはパン屋を巡り、おいしいと思ったお店で働いた。そのお店のほとんどがオーガニック。石臼で自家製粉していたんです」

 なかでも興味深かったのが、ベルリンの「ブロートガルテン」。

 1978年創業のベルリン最古のオーガニックパン屋で、石臼で自家製粉していました。職人5人がそれぞれパンやケーキを分担して作り、サンドイッチやキッシュなどもカフェで食べられたそう。

 「1キロ程の大きな塊でパンを焼くんですよ。働く環境もいいし、食べ物も充実していて、とても面白かった」と丸瀬さん。

 ドイツで3年修業。憧れていた「ブランジェリー コム・シノワ」の西川功晃さんが独立して「サ・マーシュ」をオープンしたことを知り、「西川さんの下で働いてみたい」と帰国。

 2年間働いて、「ドイツパンをもっと作りたくなって」独立。夢だった自店をオープンしました。

「僕が作るのは、口溶けの良いパン。フルーツや野菜が好きで、おいしく食べてもらいたいから、いっぱい使っています(笑)。ドイツのライ麦を自家製粉しています。挽きたての粉は香りが違うんですよ。ドイツパンは酸っぱいというイメージを変えたい」

 平日には30~40種。土日には50種余りのパンがお店に並びます。

 「色々なドイツパンを知ってもらいたい。作るのが楽しくって、種類がどんどん増えてしまう」と丸瀬さんはにっこり。

2018.12.13(木)
文・撮影=そおだよおこ