断崖絶壁が両側から迫る「三淵渓谷」

左:紅葉に彩られた三淵渓谷。全山が一斉に色づく秋、「ながい百秋湖」はまさに絶景となる。(写真提供:NPO法人最上川リバーツーリズムネットワーク)
右:長井市寺泉にある三階滝(不動滝)。春には葉山連山からの雪解け水が、落差11mを豪快に流れ落ちる。

前出の黒獅子舞の由来として、置賜野川にまつわる美しくも悲しい伝説が伝えられている。今から1000年ほど昔、豪族安部貞任の娘、卯の花姫は敵将・源義家に恋慕の情を抱くが、義家に裏切られ悲嘆の末、野川の上流・三淵に身を投じた。卯の花姫の魂はその後野川の龍神となり、黒獅子の舞はその龍神が野川を下る姿を表しているのだという。

 卯の花姫の伝説を追って、置賜野川を遡ってみることにした。そこには、長井の人々のいのちを育むと同時に、脅かしもした暴れ川と先人たちとの闘いの跡が残されていた。大雨のたびに氾濫を起こす野川を抑えるために、江戸時代に築かれた長さ450メートルにも及ぶ石積みの堤防「平山の大締切堤防」や、水争いが起きないよう水を均等に分ける工夫がなされた「野川三堰」等々。

 そして、先人たちの悲願の集大成が、平成23年に完成した長井ダムだ。堤頂長381メートル、堤高125.5メートルという東北でも屈指の規模を誇る。ダムの背後には“東北のマッターホルン”と称される祝瓶山が、その切り立った頂をのぞかせ、ダム湖「ながい百秋湖」の水面には緑豊かな山々が映し出される。長井の市街地から、わずか10キロしか離れていない場所とは思えない。

 卯の花姫が身を投げたという三淵渓谷は、ながい百秋湖のさらに上流にある。5月中旬から11月中旬まで1日4便運航されるレスキュー用ゴムボートでしか辿り着くことができない秘境だ。鏡のような湖面を進み、ボートはゆっくりと三淵渓谷へ入っていく。高さ50メートルを超える断崖絶壁が200メートルにわたって両側から迫ってくる。その光景はまさに「神秘的」のひと言。いにしえより、長井のまちと人を見守ってきた水の神のオーラを、肌で感じた瞬間だった。

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Photo=Keiji Ishikawa、Nagai City