東京から山形県長井市まで約3時間。緑豊かな、朝日・飯豊山系の懐に抱かれた長井のまちは、元禄の昔から最上川舟運で栄えた「山の港町」だ。豊かな自然と季節の花に彩られた長井の魅力を紹介する。

春から夏へ。長井のまちは花に彩られる

冠雪の峰々を背景に、競い合うように咲く長井の桜は息をのむ美しさだ。

 3月に入ると、長井にもゆっくりとした足取りで春が訪れる。最上川の川岸に残っていた雪も次第に姿を消し、草の間からふきのとうが顔をのぞかせる。そして4月中旬、土手の桜並木は満開の時を迎える。大正4年、大正天皇即位を記念して最上川の堤防約2キロにわたって植えられた「最上川堤防千本桜」だ。

左:樹齢約1200年、国指定天然記念物の「伊佐沢の久保桜」。支柱に支えられた枝に毎年見事な花をつける。
右:市街地に残る昭和初期の洋館「旧小池医院」。桜によく映える。(写真提供:小池力子氏)

 山形県南部置賜地方には、南陽市赤湯から長井市、白鷹町荒砥を結ぶ約40キロの「置賜さくら回廊」がある。最上川堤防千本桜も回廊の見どころのひとつだが、とりわけ人気なのが長井市の「伊佐沢の久保桜」と「草岡の大明神桜」だ。ともに樹齢約1200年と伝えられるエドヒガンザクラで、国指定天然記念物となっている。

Photo=Keiji Ishikawa、Nagai City