「写真に写っていた人物を描いてください」
霊感持ちの男性がおもむろに取り出したのは、人数分のコピー用紙とクリップボード、そしてボールペン。
「な、なんですかこれ……」
「ああ、聞かされていませんでしたか。あのですね、お互いに見えないようにして、例の写真に写っていた人物の絵を描いてほしいのです。思い出せる限りで構わないので、なるべく詳細に」
妙に小慣れたその口ぶり。
首筋に嫌な脂汗が浮かんできたHさんをよそに、黙って指示に従って絵を描き始めるUさんたち。いつも冗談めかして過ごしている彼らが妙に従順に絵を描いている姿を見て、これは相当厄介なことに巻き込まれたぞ、と思ったそうです。
「…………」
ですが、ペンを握ったのはいいものの、正直描きようがありません。Hさんはあのとき薄目を開けて見たふりをしただけで、実際にその写真を見たわけではありません。
とはいえ、ここで『実は見ていませんでした』と告白して、Uさんたちにあらぬ難癖をつけられても困ります。悩んだ末、Hさんは彼らがあの日話してくれた内容を必死に思い出し、その姿を想像しながら絵を描きました。
『その人影が両手を前に突き出して、お姫様抱っこみたいになんかボロボロの布の塊みたいなの持ってんのよ!』
悩みつつ描き込んでいったのは“目元が隠れたボサボサ頭で、長袖を着た男性が、ボロボロの虫食いだらけのドレスのようなものを手に抱えているイラスト”でした。
髪型や服装については話していなかったけど、もうこんな感じでいいか……――ボールペンのノックを戻して顔を上げると、皆すでに描き終えてHさんを待っていました。
「ごめんなさい。終わりました」
