今年で10年の節目を迎えた生配信サービス「TwitCasting」の怪談語りチャンネル「禍話(まがばなし)」。その語り手であるかぁなっきさんは、北九州で書店員として働くかたわらで実話怪談を集めに集め、その数は今や3,000話を超えています。

 今回はそんな熟練のホラーファンを唸らせ続けている禍話から、とある“写真”にまつわる恐ろしいお話をご紹介します――。

» 怪談特集を見る


幸か不幸か受かってしまった大手ベンチャー企業

 2010年代前半の地方都市での出来事です。

 当時20代の大学生だったHさんは、人生に大きな展望を抱いて生きるほど真剣になれていませんでした。

『あそこの会社、学歴よりもガッツ重視で一括採用してくれるらしい』

 ぼんやりとした虚無感は就職活動の段階になっても変わらず、就職への焦りのみに突き動かされた彼は、そんな不確かな噂に判断をゆだねるように、当時盛んだった通信インフラ販売の大手ベンチャーに応募したところ、幸か不幸かあっさりと受かってしまったのです。

 配属された部署は事務や契約管理だったそうですが、入ってみると噂通り“ガッツ”で新規開拓営業やテレアポに勤しむ戦力も多く在籍しており、出身大学からもUさん率いる体育会系のメンバーが5人ほど採用されていました。

 外回りから戻ってくるなり上司と大声で談笑するUさんたち。そんな様子を遠巻きに眺めていると、Hさんの中に“就職したのに学生時代の肩身の狭さがそのままスライドしたかのようなそこはかとない居心地の悪さ”が滲んできたといいます。

 Uさんらとは一方的に距離を置こうとしていたHさんでしたが、出身校が同じだからか、はたまた同じ喫煙者だったからなのか、時折、社内で「よお! Hさーん、元気してる?」と肩を叩かれて自慢話をされることも時折ありました。

 そんなある日のお昼過ぎ。

 またミスで上司に嫌味を言われたHさんが、缶コーヒー片手に喫煙所で2本目のタバコに火をつけていると、喫煙所の扉が勢いよく開き、外回りから戻ってきたUさんらと鉢合わせになりました。

次のページ 「だって、霊感あんだろ?」