そこでは“なにが起こるかわからない”
「何が起こるのかはわからないんだけど、とにかく長い間はいられないくらい怖いらしい」
殺人事件が起きたのでも自殺者が出たのでもない。具体的なエピソードがまるでついてこないその曖昧さが、逆に地元の若者たちの好奇心を定期的に刺激し続けていたそうです。
2000年代初頭のあるお盆休みの夜。当時大学1年生だったIさんたち5人組も、この廃墟に惹きつけられて肝試しに訪れていました。
1カ所だけ開いていた1階の窓から一行が忍び込んだのは、式場のそばにある控え室のような部屋で、中には古びた雑誌やビールの空き缶が床に散らばっていました。
“〇〇愛してる ずっと一緒”
“〇〇死ね”
“卍”
懐中電灯で照らし出した壁には、赤や黒のスプレーで以前忍び込んだ者たちが残したと思われる落書きが、そこかしこに描かれていました。
「ねぇ……不良っぽい人と鉢合わせたりしないよね……今お盆休みだし」
「まあ、大丈夫だろ」
カチャリ……。
そっと控え室の扉を開けたIさんたちは、式場の奥深くへ足を踏み入れました。
